
感想 ★★★★★
大人気となったシリーズの2作目。前作『屍人荘の殺人』が大ヒットを記録したため、今作のハードルはかなり上がっていたはず。その期待を裏切らない作品に仕上がっていました。
『屍人荘の殺人』の方がインパクトはあるかもしれませんが、本格ミステリとしてはこちらの方が上だと個人的には思います。
前作のヒットは決してまぐれでも、一発限りの集大成でもなかった。書き続ける実力があることを、見事に証明しています。
これからの本格ミステリ界を牽引する作家といっても、過言ではないでしょう。
あらすじ
ミステリ愛好会に所属する大学生の葉村譲と剣崎比留子は、かつて超能力研究が行われていた山奥の施設を訪れる。
魔眼の匣と呼ばれるその施設には、予言者と恐れられる老女が住んでおり、当時の研究対象だった人物。
来訪者は葉村と剣崎を含む九人。目的を持って来た者、偶然居合わせた者など、事情は様々だ。
そんな一同に対し予言者は、「この二日間で四人の男女が死ぬ」と告げる。初めは誰も信じていなかったものの、一人が死亡し状況は一変。しかも外部と繋がる橋が
崩れ落ち、陸の孤島に取り残される。
予言をなぞるかのように、一人また一人と命を落とす中、葉村と剣崎は事件の謎を
解くことができるのか――。
ミステリについての感想
前作のインパクトが強烈だったのもあり、読んでいる最中は正直そこまで心躍る
ことはなかったです。
でも真相編を読んで一気に感想が変わりました。本当に緻密に作り込まれています。
謎解きのロジックについては、なるほどそういうことかと、感嘆しながら読みました。エラリー・クイーンや有栖川有栖の小説が好きな人におすすめ。
特殊設定ということで、敬遠されている方もいるかもしれませんが、本書はむしろロジカルミステリが好きな人ほど楽しめます。
このシリーズの特徴である特殊な部分に関して言うと、本書の場合は予言、予言者です。必ず当たる予言によって、被害者の数が決まっているのが特徴です。
こういうクローズドサークルでは、何人死ぬかわからないのが普通です。それが決まっているのがかなり独特で、他にはない面白さがあります。
本書にはいくつか驚きが用意されているのですが、僕が一番驚いたのは犯人に関することです。
ネタバレにならないように濁しますが、何でもないと思っていたあの話が絡んでくるとは思ってもみませんでした。
びっくりすると同時に説得力も加わっていて、ほんとによく考えられてるなあ、唸らされました。
その他についての感想
葉村と剣崎の関係については、前作より時が経っている分、仲良くなっています。前作を読んで、二人のやり取りをラノベ的に感じた方、本書でもそういう描写はあります。
なんならもっと増えていると思っておいた方がいいです。
他にもっとラノベ的な本格ミステリもあるので、僕は気にならないのですが、どうなんでしょうね。
そういう会話が、重くなりがちな話の箸休め的な効果になっている気もしますが。
物語としては結構重めで、気分が沈んでしまう部分があります。酷い事件は起きているのですが、本当に悪い人はいないというか、そういう行動をとるのもわかるというか……。
決して共感しないけれども、理解はできてしまう。それが尚更悲しくてやるせないです。
あとがき
悲しい事件で読後感は良くないけれど、本格ミステリとして大満足。特殊設定ゆえ好みはあるかと思いますが、本格ミステリの書き手としての実力を疑う人はいないでしょう。
この先のシリーズも楽しみですね。


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