感想 ★★★☆☆
刀城言耶シリーズ初の短編集で、三つの短編と一つの中編が収められています。短編三つはどちらかというとホラーよりで、表題作の中編はいつもの長編のようなテイストでした。
あらすじ
『首切りの如き裂くもの』
ある路地裏で何人もの女が首を切られて殺害される事件が起き、いつしか幽霊が出ると噂されるようになった。そんな曰くありげな場所でまたしても女が首を切られて殺害される。しかも密室状態で。
目撃者の話によると、その直前に人魂のようなものが空に舞うのを見たという。この不可解な事件を、担当編集者の祖父江偲にのせられた刀城言耶が解決するはめに。
『迷家の如く動くもの』
薬売りの少女二人が山奥の村に訪れた時だった。一人は山で変な家を見たと言い、もう一人は見ていないと言い張る。二人がそんな話をしていると、一人また一人と薬売りが話しに加わってくる。
そして最後には、なぜか刀城言耶まで現われ、この不可解な話の真相を喝破する。
『隙魔の如き覗くもの』
扉の隙間から、未来や過去の出来事を見られる特異体質の女性は、ある日、自分が務める学校の校長が殺害される様子を隙間の先に見る。そして事件は現実となる。
現場となったのは学校付近の校長の自宅。学校に残っていた教師の中に犯人がいると目されるが、全員にアリバイがあった。はたして刀城言耶はどのようにしてこのアリバイを崩すのか。
『密室の如き籠るもの』
質屋として栄える猪丸家に、ある日突然、謎の女が現われる。そして、あれよあれよという間に女房の座におさまる。彼女はいわくつきの蔵でこっくりさんを行うようになり、それがよく当たると近所でも評判になる。
家の者は彼女に不信感を抱きながらも上手くやっていたのだが、ついに事件が起きてしまう。密室状態の蔵で死体が発見されたのだ。この家に伝わる呪いの箱〝赤箱〟の取材で来ていた刀城言耶は、いつもの如く探偵役を務めることになるのだった。
感想
正直、物足りなさを感じました。短編三つでは、ミステリとしての驚きを得られなかったし、随分あっさりした印象を受けた。
語り手は主に各話の主要人物で、刀城言耶が現われるのは最後の方になってから。それまでは怪奇色が強めで、言耶が登場してからミステリになる感じ。
怪奇的な話や祖父江偲のキャラクターなど、面白いと思えるところもあるけれど、どの話もあまり印象に残らなかったです。
そして表題作の『密室の如き籠る者』。これは中編とはいえ長編くらいの長さがあり、様々な推理が開陳されます。ミステリとしてはこの作品が一番面白かった。
しかし、このシリーズがもつ禍々しさは薄く、動機の面などは世に溢れる人情もののようでした。
あとがき
刀城言耶シリーズ初の短編集ですが、ページ数が多い方が本領を発揮できるのかもしれません。特殊な舞台を設定しているので、その方が雰囲気を作るのに良さそうです。
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