感想 ★★★☆☆
探偵が売春婦という異色シリーズの第三弾。今回はひょんなことから逮捕された少年の話と、館で起きる殺人事件の話が交互に展開されます。少年の方は社会派、館の方は本格ミステリという感じ。
おそらくこの作者にしか書けないであろうアリバイトリックが使われていて楽しめました。このトリックには感心すると同時に、思わず笑ってしまいそうになりました。
あらすじ
ある出来事がきっかけで、女性に対し奥手になっていた戸田公平はある日、崎（ミサキ）という名の社長令嬢と出会い、一気に恋に落ちる。
そしてついに関係を持つに至るのだが、淫行の罪を着せられ逮捕されるはめに。戸田は崎との関係を純愛だと証明するため、裁判で戦うことを決意する。
一方その頃、売春婦で探偵が趣味の上木らいちは、とある館にメイドとして雇われていた。そこに住んでいるのは資産家一家、館の構造は一風変わったもの、とくればやはり連続殺人事件が起きてしまい、らいちは探偵を開始する。
本格ミステリと社会派の融合
戸田公平のパートでは、逮捕されてから裁判に至るまでの順序、加えて法律や条例の問題点についても書かれており、社会派風に進んで行きます。そして彼が後になって重大な役割を果たします。
メインとなる連続殺人の方は、本格ミステリの王道といえる館もので、本格ファンとしては嬉しいところ。
館自体に施された仕掛けは珍しいものではなかった。肝はやはりアリバイトリックでしょう。エロを絡ませてあるためバカっぽく映るのですが、冷静に考えてみると確かに理にかなっていて、意外に成功率は高そうです。それがまた面白さを助長させます。
ただ、人によってはふざけるなと本を壁に叩きつけたくなるでしょう。このシリーズのトリックは全部そんな感じ。だから、今までの作品を読んで好意的に感じている人には、おすすめできます。
それにしても、このシリーズと社会派なんてまったく相容れないものと思っていたのに、予想に反して違和感なく溶け込んでいました。
細々した伏線も回収されていたし、社会派パートではたくさん調べ物もしたでしょう。トリックやキャラによって、ライトなイメージが先行しているけれど、その実、創作する際は大変な思いをしているに違いない。
エロトリックでどこまでやれるのか、是非とも頑張ってもらいたいところ。
ちなみにエロとは書いていますが、エロ漫画や官能小説的なものとは異なります。トリックのためにそれを使っているだけで、興奮させるような書き方をしているわけではないです。
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