ジュブナイルミステリ 『ぐるぐる猿と歌う鳥』加納朋子

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感想 ★★★★★
ミステリとしても楽しめるジュブナイル小説。登場人物は小学生の子供たちで、ジュブナイル小説に求めるものが詰まっています。
子供はもちろん、大人が読んでも懐かしい気持ちになれて、ジュブナイル小説としては申し分ないと思います。
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あらすじ

小学生の高見森(たかみしん)は、父親の転勤で北九州の社宅へと引っ越すことになった。

前の学校では乱暴者と言われ、周囲と馴染めなかった森。いつしか友達なんていらないと思うようになっていた。
だが、新しく引っ越した学校には、個性的な人間が多くいて、次第に心を通わせるようになる。
中でも一際変わっているのが、皆からパックと呼ばれ慕われている子供。自由気ままで頭も良く、彼に相談すれば問題は見事に解決してしまう。

しかし、そんな彼にもある問題があった。

彼らと親交を深める中で、森は幼い頃に自分が体験した不思議な出来事を思い出す。
あやという名の女の子が忽然と姿を消した事件。もしかすると、そのあやがこの社宅にいるあやと同一人物なのでは……。
様々な思いを抱えつつも、仲間たちと今を全力で楽しむ子供たちの爽快な物語。
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ジュブナイル小説として

主人公の成長譚として好感の持てる物語に仕上がっています。読んでいる最中の雰囲気も良く、結末も爽やかなので読後感が良いです。
ジュブナイル小説らしさに溢れ、小さいお子さんにも安心して進められますね。
ただそうは言っても、重い問題を扱っていたりもして、ほのぼの一辺倒ではないです。
これから先の子供たちのことを考えると、決して微笑んでばかりもいられません。それでも、作中では清々しい気分を味わえます。

ミステリとして

本作は講談社のミステリーランドというレーベルから刊行された作品。

『かつて子どもだったあなたと少年少女のためのミステリーランド』というのが、このレーベルのコンセプトとのこと。
他にも著名なミステリ作家がジュブナイル小説を書いています。僕はまだあまり読めてないのですが、面白い小説が多くあるようで読むのが楽しみですね。
残念ながら今はもう終了してしまっているようですが。
ミステリーランドと冠していることからも分かる通り、ジュブナイル小説でありながら、ちゃんとミステリとして楽しめるのが特徴となっています。
本作も序盤で謎が提示され、最後で真相が明らかになります。

なぜあやは忽然と姿を消してしまったのか、なぜ誰もあやの存在を知らないのか、納得の理由でミステリとしての出来も良いです。

あとがき

ミステリとしても楽しめますが、特にジュブナイル小説を探している人におすすめですね。
緑豊かな田舎町を舞台に、腕白な子供たちが生き生きと描かれており、元気な気持ちになれますよ。

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