感想 ★★★★☆
近未来の日本が舞台のSFミステリ。あらすじに興味を惹かれ読んでみました。
SFとしては満足ですが、謎解きに関しては予想していたタイプと違ったので、ちょっと残念でした。
あらすじ
西暦2060年代の日本。ロボット技術が発達し、人型の家事ロボットが富裕層を中心に普及していた。
ある日、警視庁の刑事・相崎はありえない現場を目撃する。家事ロボットが主人である人間を殺害したのだ。
家事ロボットはロボット三原則により、絶対に人間に危害を加えられない。それなのにどうして。何かバグが起きたに違いない。
この殺人ロボットを詳しく調査するために、製造会社に移送されることになり、相崎は付き添いとして同行する。その最中、相崎たちは謎の集団から襲撃を受ける。
それから相崎は、ロボットを巡る巨大な陰謀に巻き込まれていくのだった。
SF小説として
2060年代といったら今から40年後。比較的近い未来ですね。その世界がどのようになっているのか。それを予想したSF小説として大変面白かったです。
荒唐無稽な感じは全然無くて、実際こうなっているんじゃないかと思えるリアリティを感じました。
例えば、『日本は人口減少に歯止めが掛からず、国家戦略としてロボット技術を発展させるしかなかった』。『国民の居住地域を限定させ、インフラにかかる費用を抑えている』などなど。
なるほどねと終始頷きながら読みました。
そして本作の肝は、AIを搭載した人型アンドロイドのジャンヌ。災害時にも行動できるようにと、強固な素材で出来ており、様々な機能が搭載されています。
さらに人工知能により会話も出来ます。
主人公の刑事が相棒とタッグを組んで、巨大な陰謀に立ち向かう。映画やドラマでもよくある人気のジャンルですね。本作はそれを、刑事とロボットという異色の組み合わせでやっています。
ロボットを毛嫌いしていた刑事が、行動を共にするうちに価値観を変えていく。そんなバディものとしての面白さもあります。
ミステリ小説として
ミステリとしては何と言っても、ロボット三原則があるのになぜ人を殺せたのか、この不可能性に興味を惹かれます。
僕がもともとこの本を読みたいと思ったのも、この魅力的な謎に惹かれたからです。絶対に人間を殺せないよう定義されているのに、どんな奇想天外なトリックを使ったのか、それを楽しみにしていました。
著者の河合莞爾は本格ミステリも執筆している方なので、今回もそんなトリックが使われているものと期待していました。
でも、そういうタイプではなかった。そこが残念。SFでありながら、謎とトリックに関しては本格ミステリだったら、僕の好みにピッタリでした。
まあ、それでも充分楽しめる面白い作品です。あくまでSF小説として読むべきで、本格ミステリばりの論理やトリックを期待してはいけません。
あとがき
この物語は映像でも見てみたいですね。特にアニメ。『攻殻機動隊』や『PSYCHO-PASS』を見ても明らかなように、近未来が舞台の刑事ものはアニメと相性が良いと思うのです。
実写なら是非ハリウッド映画でやってほしい。ハリウッド好みのストーリーだと思います。なのでそういうSF映画が好きな人にもおすすめ。
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