青春本格ミステリ『ねらわれた女学校』古野まほろ あらすじと感想

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感想 ★★★☆☆

セーラー服シリーズの新作が出ていたので読んでみました。今回はシリーズ初の短編集で四編が収められています。

学園内で起きる様々な事件をお馴染みの三人娘が、ドタバタ劇を繰り広げながら、それぞれの特徴を生かして解いていきます。各短編はテイストが異なりマンネリしません。

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あらすじ

『消えたロザリオ』

無人の部屋から盗まれたロザリオの行方を捜す。

『とらわれた吸血鬼』

こうもりに変身できる吸血鬼をどうにかして孤島から脱出させようと奮起する。

『あらわれた悪魔』

魔女の疑いをかけられた親友を救うために無実の証明を試みる。

『ねらわれた女学校』

一定の法則でループする無限階段に閉じ込められた三人娘。それぞれがどのような方法で脱出するかが見所。

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物語の設定

このシリーズを未読の方のために説明しておくと、設定はかなり特殊です。

物語の舞台は、孤島に建てられた女生徒だけのミッションスクール、さらに探偵養成校という顔も持っている。

キャラクターの個性も強く文体も独特なので、本格ミステリだからと手に取っても、合わない人はいるでしょう。反対にこの設定に惹かれたなら、大好きなシリーズになるかもしれない。

多くの本格の場合、一人の探偵がすべてを解決します。それに対しこちらは三人娘がそれぞれフーダニット、ハウダニット、ホワイダニットを説明するやり方。

これを性格にも反映していてユニークな試みだと思う。ラノベ的なキャラクター小説でありながら、謎解き部分は論理的、数学的であるのも特徴といえます。

各短編の感想

各短編においては『消えたロザリオ』が一番オーソドックスなタイプ。

アリバイのない犯人候補の中から一人に絞っていくのだが、フーダニットをババ抜きに例えている点が面白い。

ロザリオの本当の意味を知って勉強になった気分。犯人当ての難易度はさほど高くないけれど、このロザリオの意味を知らないと詰むところまではいけない。本作の中で一番面白かった。

『とらわれた吸血鬼』はファンタジー。なぜなら吸血鬼の存在を認めているから。はじめは夢の中の出来事かと思ったくらい。そういう世界観なんだと初めて知りました。もともと現実感が希薄とはいえ、さらに特殊感が強まった。

『あらわれた悪魔』もまた異質。魔女と疑われた女生徒相手に数々の拷問が繰り広げられ、さながらサディスティックホラーの様相を呈している。これを解くにも魔女裁判の知識が必要。

最後に表題作の『ねらわれた女学校』。これは夢の中の話。とは言っても、学校側の策略によって見させられている夢で、本シリーズを読んでいる人なら違和感を持たないはず。いわゆる夢オチの類とは別種。

この短編にシリーズの特色がぎゅっと詰まっています。三人とも同じ無限階段の夢に閉じ込められるも、それぞれが違った方法で正解を見出す。ちょっと数学色が強くて僕の好みではなかった。

あとがき

シリーズ全体としての位置づけで見ると、この短編集で謎の敵の存在が明らかになったりと、若干進展をみせます。ゆえに順番に読んだ方がいいかもしれません。

本作からいきなり読んでもまったく問題はないのですが、何のこっちゃと思うワードはいろいろあるでしょうね。

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