『LAコンフィデンシャル』 ジェイムズ・エルロイ

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感想 ★★★★☆

1990年に発表された暗黒のLA四部作の第三弾。前作『ビッグ・ノーウェア』と同様、三人の主人公を軸に物語が展開して行きます。

重層的な作品で、その複雑さは前作と同等かそれ以上。人間関係を理解するのに苦労するし、長い作品なので読み終えるまでに時間が掛かりました。

その分読み終えた後の余韻は感慨深いものがあります

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あらすじ

主人公は以下の三人で、彼らのストーリーが交互に展開していきます。

エド・エクスリー 

野心家の警察官でどんどん出世していくエリート。戦時中に日本軍の小隊を皆殺しにして勲章をもらっている。しかしそれは、自害していたところを自分が殺したように偽装しただけ。そんな秘密を抱える彼は、頭脳明晰だが臆病な一面がある。

バド・ホワイト 

幼少期に目の前で母親を殺された経験がある警察官。死亡したのは父親による暴力が原因。そのためバドは女に対する暴力を許すことができず、そういう事件に出くわすと暴走してしまう傾向にある。血の気の多いタフな男。

ジャック・ヴィンセンズ

麻薬と酒に溺れていた過去をもつ警察官。過去に犯人と間違えて民間人を射殺したことがあり、それがトラウマになっている。

この物語は七年にも及ぶ長大な話で、その間に数々の事件が起きます。どんな事件が起こるか列挙したいと思います。

血塗られたクリスマス事件

警察官による未決囚に対する集団暴行事件。この事件に置いてバドの相棒がスケープゴートにされ、告発したエクスリーとバドの間に対立が起きる。

ナイト・アウルの大量殺害事件

 

本作のメインとなる話。カフェで従業員と客が銃で殺害されるセンセーショナルな事件。

メキシコ人女性拉致監禁事件

 

四人の黒人がメキシコ人を拉致監禁し暴行する。

異常ポルノ雑誌事件

 

同性愛など異常なポルノ雑誌が製造され闇で販売される。

雑誌記者惨殺事件

 

数々のネタをもっていた雑誌の記者が何者かによって惨殺される。

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感想

これら数々の事件を通して三人の警察官の人生が描かれています。『ビッグ・ノーウエア』を読んだ時にも思いましたが、よくこんな複雑なストーリーを破綻なく構成できるものです。

ウォルト・ディズニーを思わせる人物は出てくるし、過去の猟奇事件も絡んでくるしで、本当に複雑で遠大な話。

そして、ジェイムズエルロイの代名詞ともいえる暴力描写は本作でも健在。作中でいったい何人死んだかわからないほど。

謎の多い事件を解決するミステリとしての面白さはもちろん、それぞれトラウマを抱えた三人の人間ドラマも面白いです。

特に互いに憎み合うエクスリーとバドの対立に興味を惹かれる。相手を陥れようと謀略を練るのだが、大きな事件を前にして、大きな敵を前にしてどう変化するのか目が離せません。

目的のためなら手段を選ばない腐敗した警察機構、麻薬や売春を取り仕切る闇の組織、タフな男たちによる命がけの暴力と駆け引きには、心が揺さぶられます。

この四部作はそれぞれ独立した話ですが、本作を通して巨大な陰謀が明らかになります。壮大な野望を描いた黒幕の存在が判明してどうなるかと思いきや、本作では罰を受けません。

第四作で何か進展があるということでしょうか。続きが気になるところ。

あとがき

最後に一つ。この作品にはアサートン事件というのが出てくるんですが、これは島田荘司の『占星術殺人事件』に出てくるアゾートと何か関連があるんでしょうか。

この二つはあまりにも酷似しています。出版されたのは『占星術殺人事件』の方が先なので、エルロイがインスピレーションを受けたのかもしれませんね。

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