感想 ★★★☆☆
SFの傑作として有名な作品でやたらと評価が高いため、いったいどれほど面白いのだろうと、かなり期待して読みました。
特に予備知識はなくて、ミステリ的な面白さがあることだけは知っていました。面白さの種類としては、知的好奇心をくすぐられるタイプのもので、ハラハラドキドキするようなタイプではなかったです。
ストーリーは淡々と進んで行き、凝った構成ではないですが、結末の意外性は凄まじかったです。
あらすじ
月面で深紅の宇宙服を着た死体が発見され、科学者たちはこの死体が何者なのか調査をする。
その結果、ほとんど人間と同じ組成ながら、現代人ではないことが判明し、科学者たちは世紀の大発見だと鼻息を荒くする。
宇宙のどこかに、人間と同じレベルの知的生命体が存在する可能性が出てきたからだ。
さらに詳しく調査を進めるうちに、次々と意外な事実が明らかとなり、様々な仮説がたてられた末、まったく予想外の正体が判明するのだった。
感想
物語の舞台は科学技術が発達した未来。ハードSFを読み慣れていない僕にとっては、科学用語が頻発して、退屈に感じるシーンがたびたびありました。
SFの設定だけを使ったファンタジー的なエンタメ作品と違い、リアリティにこだわっている印象を受けました。学術的な堅い作品という感じ。
展開の仕方も学者たちによる仮説が主で、劇的なことは起きません。
だから退屈とは言わないまでも、心を揺さぶられることなく読み進めて行きました。正直、この時点では、なぜこれほど高評価なのかまったくわかなかったです。
しかし、終盤になってすべての疑問が明らかになると、その考えが一変しました。
まったく予想だにしなかった結末を見せられて、世界観の逆転というか、なんとも言えない気持ちよさを味わいました。思わず顔が綻んでしまいましたね。
嬉しい驚き。なんとも言えないカタルシスでした。ミステリとして読めるというのも納得。
あとがき
この作品は1977年に発表された作品。当時どれだけ宇宙についてわかっていたのか知りませんが、著者の想像力、知識に裏打ちされた理論は凄いですね。
これが正しい歴史なんじゃないかと思うほどでした。
壮大なロマンを感じられる作品なので、普段SFを読まない人でも、最後まで読んでみることをおすすめします。知的好奇心を満たしてくれますよ。
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