文体が特殊過ぎる『ホワイト・ジャズ』 ジェイムズ・エルロイ

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感想 ★★★☆☆

暗黒のLA四部作の最後を飾る作品。この作品は文体が特殊で読みにくいと評判なので、覚悟して読み始めたのですが、思ったほど読みにくさは感じませんでした。

ただ、何も知らずにいきなり読んでいたら、相当読みにくかったと思います。会話文は普通なんですが、地の文のセンテンスが非常に短い。

さらに記号や体言止めを多用しているため、ぶつ切りになっている感じがして、慣れるまでは我慢が必要ですね。

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あらすじ

同じ四部作の『ビッグ・ノーウエア』、『LAコンフィデンシャル』は、三人の主人公の視点が入れ替わりながら進んで行きました。しかし本書では一人の主人公の一人称で語られます。

主人公のデイヴィット・クラインは、人を殺すのも厭わないタフな警察官。彼がLAを舞台にした巨大な陰謀に巻き込まれていきます。

前作までの登場人物も引き続き登場するため、本書を読む前に一連のシリーズ作品を読んでおいた方がいいと思います。『ブラック・ダリア』は独立しているため、『ビッグ・ノーウエア』からでも構いません。

さて、本作もこれまでと同様に、非常に複雑で濃密なストーリー。的確に内容を伝えるのが難しいです。

主軸となるのは、警察とも繋がりのある麻薬の売人・カフェスジアン家に何者かが侵入する事件。飼い犬が惨殺された上に、家の中を滅茶苦茶に荒らされます。そしてこの事件が、やがて陰惨な事件へと発展していく。

この事件を担当することになったクライン刑事は、捜査を進めるうちにカフェスジアン家の異常性に気づく。

その後カフェスジアンと仲の良いヘリック家の存在が判明するも、彼らは何者かによってむごたらしい姿へと変えられてしまいます。

やがて両家に隠された哀しくも醜い秘密が明らかになるのだった。

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感想

この事件の他にも様々なことが起きます。LA警察と連邦検察の対立、刑事部長と黒幕のかけひき、クラインと恋人の犯罪など、いろんな要素が絡んできて重層的な話になっています。

主人公のクラインは気持ち良いほどの悪徳警官です。感情移入はできませんが、徹底しているので爽快があるし、悪人だからどういう選択をするかわかりません。なので先が読めない面白さがあります。

長年にわたって繰り広げられた、刑事部長と黒幕の争いも本書で終結。個人的には少し消化不良に感じました。

普通に楽しめる作品でしたが、僕は『ビッグ・ノーウエア』と『LAコンフィデンシャル』の方が好きですね。メインとなる事件がその二つの方が魅力的です。

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