王道のクローズドサークル 『屍の命題』 門前典之

snow

感想 ★★★☆☆

雪に閉ざされた館で連続殺人が繰り広げられる、典型的なクローズドサークルもの。

真相には思わず苦笑せざるを得ない。中にはこんなのありえないと壁に本を投げつける人もいるかもしれません。いわゆるバカミスというやつです。

ただ事件の辻褄はちゃんと合っていて僕は楽しめました。

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あらすじ

行方不明中の教授が建てた館に、彼と由来のある人物六人が一堂に会した。招待主である教授夫人が現われず、彼らは教授が集めた昆虫標本や、拷問器具のコレクションを見たりして一夜を過ごす。

そして翌日、メンバーの一人が死体で発見される。彼女が死んでいたのは雪が降り積もった屋外で、足跡は彼女のものしかなかった。

次に発見されたのは館付近にある湖での溺死体。それからも殺人が続き、ついには全員が死亡してしまう。

この陰惨な事件の手記を手に入れた探偵と助手が調査を開始して、最後には驚くべき真相が明らかとなる。

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感想

本作のポイントは死んだ全員が違う方法で殺されていること。殴殺、溺死、毒死などいろいろで、なぜそんな効率の悪いことをしたのか、真相で明かされる理由には納得がいくし、全員が亡くなった事件の犯人には意外性もあります。

バカミスと言われるゆえんは、ある登場人物が語る不可解な目撃情報によるところが大きい。その人物は雪の中を這って歩く巨大なカブトムシを見たというのだ。

この意味が解決編で明らかになるのですが、そんなバカなと思うようなぶっとんだもので、リアリティはゼロ。でも、僕は嫌いではないです。

そして足跡のない雪密室の真相も奇抜だ。こちらは島田荘司ばりの大胆なトリック。実現可能かどうかは抜きにして、辻褄自体はあっていて納得もいく。

しかし荒唐無稽なのは否めなくて、この種の方法を受け入れられるかどうかで、本作の評価は変わってきそうです。

この一連の事件自体はよかったものの、最後の一捻りは余計に感じました。これによってただでさえ現実味のない話がますます現実味をなくして、蛇足だったと思う。

あとがき

本格として面白いと感じるところがあるのは間違いなくて、普通に楽しめました。でも、読み終わった後の感慨や満足感は特にありませんでした。

これは登場人物に魅力がなかったせいかもしれません。館で死んだ面々もそうだし、探偵役と助手にも特に個性が感じられなかったですね。

ネタとして読んでいるのもいいと思います。

コメント

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