刀城言耶シリーズ『凶鳥の如き忌むもの』三津田信三

island

感想 ★★★★☆

刀城言耶シリーズの第二弾は、謎の儀式が行われる瀬戸内の島が舞台。本格ミステリと民俗学が融合した独特の雰囲気は本作も健在。

消失事件を扱った作品で、その真相は強く印象に残ります。

厭魅の如き憑くもの』や『首無しの如き祟るもの』よりも予想しやすいとはいえ、真相は信じられないような凄さです。

いろいろ思うところがあるにしても、一度読んだら忘れられないインパクトがあります。

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あらすじ

瀬戸内海に浮かぶ鳥坏島(とりつきじま)で、18年ぶりに秘儀が行われると聞き、刀城言耶が取材のため島を訪れる。

その地域では、古くから大鳥様なる鳥の神様を信仰しており、神域である島と、その島にある神社の巫女は古くから崇められてきた。

秘儀は鳥人の儀と呼ばれており、巫女の他に詳細を知る者はいない。これだけでも取材に値するが、実は18年前に行われた鳥人の儀で、参加した七人中、六人が行方不明になる事件が起きていた。

刀城言耶がこれに並々ならぬ興味を示したのは言うまでもない。そして言耶たちが見守る中で儀式が始まり、しばらくすると異常事態が起きる。

密室と化した神社から、巫女が忽然と姿を消すのである。言耶たちはこの謎を解こうと様々な可能性を検討する。しかしそうこうする間に、一人また一人と姿を消して行く。

まるで18年前の再現のような状況の中、はたして彼は真相を喝破し、無事に島から脱出することができるのか。

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舞台の雰囲気が最高

人が寄りつかない島の断崖絶壁にある神社。島の上空を旋回する巨大な禿鷲。この妖しげな雰囲気がたまりません。神秘的だったし、本格ミステリとしても楽しめて満足。

島や儀式の説明が長く、事件が始まるまでが遅いのは前作同様です。ただ、今作は刀城言耶の視点のみで語られていくため、すっきりした印象でストーリーを把握しやすい。

中盤では密室からの消失パターンを検証する、密室談義があります。有名なディスクン・カーの密室講義みたいな感じ。こういうミステリ談義が好きな人は、必読ですね。

トリックについて

本作の肝はなんといっても巫女の消失事件。この結末、はたしてそんなに上手くいくのかと、大いに疑問を感じますが、新しいことをやっているのは事実。

中盤で検証された消失パターンの、どれにもこのトリックは当てはまりません。それをアピールするために、中盤で詳しく議論したのかもしれない。

このトリックには、驚きというよりも感心に近いものを感じました。


その他の消失事件の中には、取るに足らないものもありました。方法についても動機についても適当で、殺す必然性がないようにすら思える。

18年前の事件も、もっと驚愕するような真相を期待していたので、正直言って拍子抜けしました。謎として凄く魅力的だっただけに残念。後処理はどうしたんだという疑問も残ります。

最後に

シリーズの中では一番評価が低いかもしれないけど、僕は好きです。

真相がわかりやすいとしても、メインの事件は消失の新しい考え方で面白かったし、そのシーンを想像するとホラー的な恐怖を覚えます。とにかく印象に残る事件なのは疑うべくもない。

禍々しい舞台設定が秀逸だったし、密室談義も面白かったので大満足です。

 

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