感想 ★★★★☆
衝撃的な内容と後味の悪さで話題となった『神様ゲーム』の続編。またしても衝撃的な内容で堪能しました。各種ランキングで上位に選ばれているのも納得の出来栄え。
ただしそれはミステリの出来に関してのことで、ストーリーや設定にリアリティがないため、不満に感じる人もいるかもしれません。
あらすじ
物語の主人公は小学五年生の桑町淳。桑町は同じ小学五年生で結成された少年探偵団に所属しており、数々の事件と遭遇する。
同じクラスには鈴木という名の神様がいて、児童たちは彼が神様だと信じて疑わない。
桑町は鈴木と仲が良く、事件が起きるたびに犯人の名前を教えてもらっているが、方法や動機までは教えてくれない。中にはその人物には不可能と思えるものもある。
しかし、神様がいうことは絶対に正しいので、探偵団はどうやってやったのかを推理する。
設定について
この作品を読み始めてまず思ったのは、登場人物にまったくリアリティがないということ。小学五年生の一人称なのに語彙は豊富で考え方も大人。この語り口なら高校生、いや、大学生くらいが適当でしょう。
だから、もしかして子供と見せかけて本当は大人だった、という類の叙述トリックかと邪推してしまった。そのくらい違和感があります。
前作『神様ゲーム』ではちゃんと子供らしかったんですけどね。今回あえてこうしたのは、著者の遊び心でしょうか。
僕は純粋にミステリとしての面白さを求めているので、そういうのは無視できるけれど、物語に入りこめない人もいるかもしれません。
ミステリについて
さて、本作は六篇が収められた連作短編集です。各編の冒頭でいきなり犯人の名前が明かされます。それが正しいことが前提となるため、基本的にはハウダニットの作品。
最初のうちは普通のアリバイ崩しといった感じで、それはそれで楽しめるとしても、物足りなさを感じていました。
この特殊な設定が『神様ゲーム』のように生かされておらず、こういう感じで進むのかと少し残念に思っていました。
しかし、『バレンタイン昔語り』から急転直下の展開を見せ、唸り声を上げました。さすが麻耶雄嵩。どこか人を食ったようなところのある著者の特徴が、いかんなく発揮されています。
あとがき
神様がいうことは絶対に正しい。この設定を逆手にとった仕掛けを施し、謎と解決の新たな面白さを生み出した斬新な作品といえます。
ミステリ好きの人には自信を持っておすすめできる一冊。
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