刀城言耶シリーズ『山魔の如き嗤うもの』三津田信三

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感想 ★★★☆☆

刀城言耶シリーズ第四弾となる本作は、本格ミステリ・ベスト10で1位を獲得するなど、高い評価を得ています。しかし個人的には、今までのシリーズ作の中で一番つまらなく感じました。

確かにトリックに関しては趣向が凝らされています。でもストーリーと舞台設定にあまり惹かれなかったです。

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あらすじ

ある男が山で摩訶不思議な体験をし、それ記した手記を刀城言耶が読む。興味を持った彼が現地に訪れると、次々と連続殺人事件が発生し――というお馴染みの展開。

体験の内容は、山を彷徨っている最中に一軒家を発見し、そこに住んでいた家族にもてなされ一夜を過ごすも、翌朝起きてみるとその家族が消失していた、というもの。

そして連続殺人の方は、童歌を使った見立て殺人で、陰惨な死体が次々と発見されます。

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感想

今一つ満足感を得られなかったのは、禍々しさを感じられなかったからかもしれません。男が山で体験する恐怖の数々は、よくある怖い話レベルのもので、怖さも特殊性も感じられませんでした。

真相を明かされても、幽霊の正体みたり枯れ尾花、の類でうーんという感じ。

刀城言耶が発見する様々な死体は、悲惨な状態のはずなのに、それが伝わって来ませんでした。

いわゆる、登場人物が駒のようというか、こんな殺され方をしていても、かわいそうとか酷いとかいう気持ちが湧いてこない。

それから、密室のトリックが大したことなかったのも残念。本作の目的はそこではなく違うところにあるとはいえ、少し拍子抜けしてしまいました。

肝心の連続殺人の犯人と、消えた一家の謎については、意外性があって流石。最終的には楽しませてくれます。

類例のない斬新なトリックというわけではなく、巧みにアレンジして驚きをもたらしており、全体で見た時に上手さが光ります。

ただ、動機については首肯しかねます。さすがにあの程度のことでここまでするのは、微塵も共感できないですね。

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