『創作の極意と掟』 筒井康隆


作家歴60年という御大が書いた創作に関するエッセイ。
序言で筒井さんはプロ作家や新人に向けて書いた遺言と言っている。だから、これから小説を書こうという人のための、具体的な小説作法が書かれた本とは異なる。
作家生活を続けてきて感じたことなどを面白おかしく書いているので、楽しく読むことができるし、また有名な世界文学の作品を例にあげているのでガイドブックとしても使えるだろう。


項目は『凄味』、『迫力』、『妄想』など、31項目にもわたり、それぞれ独特の見解をしめしている。普通の指南書には書かれていないようなこともあるため、参考になるはず。
例えば、『薬物』という項目あって、そこではアルコールや睡眠薬を使うと凄い着想を得られるのかなど、著者の経験が語られている。

『遅延』のところでは、読者を飽きさせないように次から次へと過激な展開を重ねるのではなくて、時には主人公の繰り言を長々といれたりして、遅延させることも必要と書いている。こういう技術的な点についても語られているのだ。

例に挙げている作品も『失われた時を求めて』などの世界文学から、『鈴宮ハルヒの憂鬱』などのライトノベルまで様々なものをあげており、著者の幅のひろさを感じさせる。
膨大な知識と経験を有した作家の遺言、楽しんで読むことができる良書だった。


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