『血の収穫』ダシール・ハメット ハードボイルド小説の元祖

感想 ★★★☆☆

著者ダシール・ハメットのデビュー長編。本作は数々の作家に影響を与えたことで有名

黒沢明監督の『用心棒』もこの作品から多大なインスパイアを受けているし、日本のハードボイルド作家の代表的存在ともいえる、大藪晴彦も当然ながら影響を受けています。

悪人たちが跋扈する街での覇権争いによって、血で血を洗うような抗争が繰り広げられるバイオレンス小説。

ちょっと古さは感じますが、こういうのが好きな人はハマるでしょうね。

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あらすじ

コンティネンタル探偵社のオプ(調査員という意味)は、新聞社社長のドナルドから依頼され、ポイズンヴィルと呼ばれる街へやってくる。

だが、その社長はオプと会う前に何者かに銃撃され殺されてしまう。

オプはポイズンヴィルの権力者でドナルドの父親でもあるエリヒューの元へ向かい、この街がどんな状況にあるのかを知る。

ギャングが好きなように幅を利かせており、警察組織は腐敗しきっている。

この街を変えたいと思っているエリヒューは、その手伝いをオプに依頼する。調査をするうちにオプは命を狙われ、何度も危険な目に遭う。

次第にこの街に憎しみを覚えるようになるオプ。利権と汚職にまみれた街を潰すために、オプはギャング同士で潰し合うように仕向ける。

その非情ともいえる策略によって街は暴力と裏切りで溢れかえり、数多くの血が流れるのだった。

 

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感想

ハードボイルドといえば、感情を交えず淡々と行動を記していく乾いた文体が特徴。

文学でそれをやったのがアメリカの作家ヘミングウェイ。そこから影響を受けたハメットがミステリに応用し、それが現在のハードボイルドの礎となっています。

その後、レイモンド・チャンドラーやロス・マクドナルドなどが出てきて、彼らはハードボイルドの三大作家と言われている。

読んでみると、なるほど確かにオプの感情は書かれておらず、何を考えているかわかりません。

それどころかオプの名前すらも明かされないのです。非情にハードボイルドですね。軟弱さは微塵も感じない。

地の文がほとんど行動について書かれているため、テンポよく淡々と進んで行きます。主人公の感情ではなく話の筋だけを追いたい人は、ハードボイルドは合っているでしょう。

なんだか映画を観ているような感覚になります。

オプ意外の登場人物も曲者ばかり。老獪な街のボス、カジノを仕切るギャング、卑怯な謀略も厭わない警察署長、男を惑わす娼婦とバラエティに富んでいます。

そんな人間たちで繰り広げられる街の利権を賭けた暴力劇。なかなか堪能できるお話でした。

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