
感想 ★★★★★
前作『デッドマン』に登場した鏑木たちが活躍するシリーズ二作目。やはり書く力のある作家だと改めて思いました。次々と登場する不可解な謎をラストで見事に収束させています。解決へと向かうまでの構成は複雑で、筆力がないとこのように書くことはできないでしょう。傑作と評しても差し支えない作品。
あらすじ
多摩川の河川敷で内臓を奪われ全身を焼かれた身元不明の死体が発見された。手がかりとなるのは死体に残されていたトンボのペンダント。
警視庁、捜査一課の鏑木班は、このわずかな手掛かりを頼りに捜査を開始する。次期に被害者はダムに沈む町、飛龍村出身ということが判明する。捜査を続けるうちに、ダム建設にかかわる汚職事件や二十年前の未解決事件などが絡んできて、事件はより一層複雑になっていく。
一つの村を舞台にした巨大な陰謀の陰。はたしてそれが今回の事件と関係があるのか。犯人はなぜ死体の内臓を持ち去ったのか。すべての謎が明かされる時、事件の裏に隠された悲哀の物語があきらかになる。
ストーリーも面白い小説です
身元不明の不可解な死体が発見されるミステリ的な面白さだけでなく、ダム建設に関わる陰謀まであって、非常にスケールの大きな話。山間にある沈みゆく村はトンボの生息地で、トンボがこの作品のキーになっています。
自然に囲まれた飛龍村。その地で育った幼なじみ三人。これらが物語に情緒と深みを加えており、存分に堪能できる作品に仕上がっています。
首をかしげたくなる部分がないわけではないが、それを気にならなくさせる面白さがありました。すべてに納得のいく説明をつけるのは無理な話だから、結局そう思わせられるかどうかが重要なってくる。
肝心の内臓を持ち去った理由が納得いったし、最後のダムのシーンも奇抜で面白いから、確かな満足感を得られました。
事件の内容が陰惨なので、大ヒットというわけにはいかないでしょうが、もう少し注目されてもいいと思いますね。本格ミステリ的な面白さもあるし、警察小説としての質も高いです。



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