特殊設定ミステリ 『孤島の来訪者』方丈貴恵 あらすじと感想

island (2)

感想 ★★★★☆

特殊設定ミステリの第二弾。今回は孤島が舞台です。閉ざされた状況で不可能殺人が連続して発生し、それを自分たちで解決します。

まさに王道のクローズドサークル。ただし一筋縄ではいきません。一風どころか、かなり変わった設定が加味されています。

僕は映画の『プレデター』を想起しました。それでいて謎解きはちゃんとロジカル。特殊設定が好きな人は外せない作品ですね。

↓前作『時空旅行者の砂時計』の感想はこちら

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あらすじ

殺された幼馴染みの復讐を果たすため、竜泉佑樹はテレビ局のADになった。ターゲットはテレビ局のプロデューサー、制作会社の社長、ディレクターの三人。一筋縄ではいかない彼らに、どうやって復讐するか機会を探っていた。

そしてようやくチャンスが巡ってくる。番組制作のため、南海の孤島へ行くことに
なったのだ。島に着くと竜泉は、外部と連絡を取るための通信機を破壊する。

これで邪魔者は入らない。準備は万端に整った。後は1人ずつ殺していくだけ。

しかし予想外の出来事に見舞われる。ターゲットが何者かに殺されてしまうのだ。
何としてもこの手で復讐したい竜泉は、これ以上先を越されないように犯人捜しに
乗り出す。しかし、とんでもない事態が待ち受けていた。
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設定

前作『時空旅行者の砂時計』と同じシリーズに分類されているようですが、関連はまったくありません。主人公が前回登場した竜泉家の人間というだけです。なのでこの作品から読んで問題ありません。

本作の特徴は、何といっても人ならざる者が登場する点。これは本の紹介にも書いてあるし、ネタバレではありません。

むしろこれを知らずに読むと、思ってたのと違うとなるでしょう。尋常ならざる能力を持った者が事件に介入してきます。

そういう超自然的な要素があるのが前提となった、本格ミステリです。

とはいえ、謎解きに関してはちゃんと論理的に解決されるので、そこはご安心を。

感想

おそらく読んだ人なら『プレデター』を思い浮かべたというのも、納得してもらえると思います。事件は猟奇的だし、他にもイメージさせる要素があります。

でもそこには理由があって、そんなホラーの設定をトリックに利用しているのが、面白いですね。

三つ起きる事件のトリックにも納得できます。ただ、覚える項目が多いのが難点。事件の状況だけでなく、化物の設定も覚えてないと真相には辿り着けません。

僕は物覚えがよくないので、メインとも言える最初の事件の謎解きをされても、「ああ、そういえばそんなことも書かれてたな」と思ってしまった。

それで驚きを今一つ得られなかったです。全部ちゃんと覚えられる人なら、もっと驚愕できるかもしれませんね。

本作はとにかくサービス精神が豊富。化物が出てくる時点でエンタメ感満載ですが、ラストのどんでん返しの連続など、色んな要素が詰め込まれています。

前作もそうですが、特殊設定の中で本格ミステリをやるのって大変だと思うんですよね。下手したら何でもありになりますからね。

特殊な設定を作った上で、さらに破綻しないようにロジカルな謎を作るのだから、本当に凄い。

それと、この著者の特徴として後味の良さが挙げられます。陰惨な事件ながら、今回もまた後味は良いです。最後に救いがあるのはやはり良いもんです。

あとがき

最近はこういう特殊設定が、本格ミステリ界隈で流行ってますね。特に鮎川賞出身の作家にこの手の描き手が多い。これからも期待したいところです。

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