『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』泡坂妻夫 これはトリックかマジックか

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感想 ★★★★☆

トリックというべきか、マジックというべきか。とにかく驚くべき仕掛けが施された小説です。マジシャンでもある著者の遊び心が詰まった一冊。

最初の扉部分に〝未読の人にしあわせの書の秘密を明かさないで下さい〟という但し書きがあるのも納得。それがわかった時、驚くとともに感心したし、思わず笑みがこぼれました。
 


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あらすじと内容

物語の内容は、多くの信者を抱える巨大な新興宗教の二代目継承問題に、主人公たち一行が巻き込まれていくというもの。

主人公の美保子はガンジー先生の二番弟子で、一番弟子の不動丸を含めた三人は各地を転々と旅しています。

ガンジー先生はインドでヨガの修行をした人物で、超能力を見破ったり、 あるいはそのまねごとなんかをしていて、ちょっと怪しいながら推理力は確かな模様。

そんな彼らはひょんなことから〝しあわせの書〟なるものと出会い、興味を惹かれてその本を発行している宗教団体〝惟霊講会(いれいこうかい)〟の本部へと向かう。

惟霊講会は教祖が一代で築き上げた新興宗教で、跡目を誰にするかで悩んでいた高齢の教祖は、候補者を絞り込んだ後、断食を行って最後までやり遂げた者を二代目とする事に決めます。

そんな時にやってきたヨガマスターのガンジー先生に、断食の見届け人になってくれと教祖は頼みます。
 
美保子たち三人と候補者たちは山奥の家で21日間の断食を決行する。そして最終日、衰弱しながらもなんとか耐え抜いた彼らに、 この断食の本当の意味が知らされます。

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感想

新興宗教がらみだから陰惨な殺人が次々と起こっていくのかと思ったら、そうではなくて、本書は誰も死なないミステリーでした。したがってグロテスクな話が苦手という人でも安心して読むことができます。

それなら、日常の謎のようなほのぼのした感じかというと、それとも違って、物語には凶悪な企みが潜んでいます。しかし、それが決行されないまま終わります。探偵が事件を未然に防ぐという珍しい作品かもしれません。

ネタバレになるため詳しいことが書けないのが残念。思わず言いたくなるような凄い仕掛けが施してあります。この気持ちは読んだ人ならわかるはず。ページ数は多くないので、とりあえず読んでみることをおすすめします。


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