感想 ★★★☆☆
鬼畜探偵メルカトル鮎とワトソン役の美袋三条が活躍する連作短編集。
収録されているのはどれも本格ミステリの短編。謎解きが好きな人は楽しめると思う。
ただ、探偵役のメルカトルは鬼畜なので、それを知った上で読まないと不快に感じるかも。
お行儀のいい探偵だけじゃなく、こういう探偵がいてもいいと思うので僕は楽しめました。
もちろん、現実では決して許されませんが、小説内であれば笑い飛ばすことができます。リアリティを追求した小説ではなくて、人工的な本格ミステリなので。
そういう嫌われ者の相棒は、非の打ちどころのない善人を配するのが通常だと思います。
しかし美袋は微妙に鬼畜な部分があって、その辺が珍しく感じました。
このキャラ二人を受け入れられるかどうかで、作品に対する評価は変わりそうです。
あらすじ
『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』
友人に誘われ別荘にやって来た美袋は、そこで出会った女性に恋をする。だが、彼女は鍵のかかった書斎で拳銃自殺している姿で発見される。
さらにもう一つ他殺体が発見され、その犯行も彼女の仕業によるものと判断される。
美袋は惚れた女の無実をはらすため、友人であるメルカトル鮎を呼び寄せる。
メルカトルはちょっと話を聴いただけであっという間に事件を解決する。彼が語る真相は美袋にとって思いもよらないものだった。
『化粧した男の冒険』
メルカトルと美袋の宿泊先で男の死体が発見される。その死体の顔にはなぜか化粧がほどこされていた。女装趣味などはなかった彼の顔になぜ化粧が。
この不可解な謎もメルカトルにとってはどうということはなかった。
『小人閒居為不善』
メルカトルの探偵事務所へ年老いた日本画家が現われる。彼の依頼内容は遺産を狙っている身内から、身を守ってほしいというものだった。
メルカトルはすぐに彼の本当の狙いを看破する。
『水難』
旅館で日ごろの疲れを癒していた探偵コンビは、そこで幽霊を見てしまう。不思議がっていた矢先、旅館の裏山にある古い蔵で、女性二人の遺体が発見される。
一人は刺殺、もう一人は転落死だった。幽霊が絡む不思議な事件をメルカトルが解決へと導く。
『ノスタルジア』
正月休みで暇を持て余していたメルカトルは、犯人当て小説を書いて美袋に出題する。内容は雪に閉ざされた屋敷で起こる密室もの。
不正解した美袋がアンフェアだと抗議すれば、メルカトルがそうではないと解説する。メルカトルの解説は彼のキャラ通り人を食ったようなものだった。
『彷徨える美袋』
目が覚めると見知らぬ山小屋にいた美袋。命からがら近くのペンションに辿り着くと、そこで殺人事件が起こる。お約束通りメルカトルに助けを求めるが実は……。
『シベリア急行西へ』
メルカトルと美袋のコンビはロシア鉄道旅行に来ていた。雪に閉ざされた場所を何日間も進む寝台列車の中で事件が起こる。
個室で謎の死を遂げていたのは、同じツアーに参加中の人物だった。わずかな手掛かりを頼りにメルカトルは論理の力で事件の解決に挑む。
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