
感想 ★★★☆☆
文庫化で分冊された『zoo』の二冊目。『zoo1』にはホラー系の短編が集められており、本書にはドタバタ劇から寓話のような話まで、いろんなタイプの話があります。
実験的な短編を集めたような印象。個性豊かなのでどれか一つは好きなものが見つかるでしょうね。
あらすじ
『血液を探せ』
目を覚ますと何者かに刺され血まみれになっていた資産家。この資産家は痛みを感じない特異体質だったので、自分が刺されたことに全く気付かなかった。輸血するための血液を探すドタバタ劇。
『冷たい森の白い家』
グリム童話のような話。馬小屋で育った少年は、家を飛び出し森で生活をするようになる。やがて少年は森の中に自分の家を建てることを決意する。その材料に選んだものとは……。
『Closet』
ミステリテイストな話。殺人事件が起き犯人を探す。重厚なクローゼットが大きな意味を持つ。
『神の言葉』
自分の発した言葉が現実になってしまう男の話。奇奇怪怪でありながら純文学のような読み味のある独特な作品。
『落ちる飛行機の中で』
ハイジャックされた機内で、乗客に安楽死の薬を勧めるサラリーマン。ハイジャック犯の目的は機体を墜落させること。それなら薬を買った方が苦しまずに死ねる。しかしハイジャックは失敗に終わるかもしれない。買うべきか買わざるべきか主人公は苦悩する。
『むかし夕陽の公園で』
小説というよりは実話系の怖い話といった感じ。
感想
テイストの違う話を集めるのを目標にしたかのように、どの話もまったくタイプが異なります。どの話が一番好きか問うと、バラバラの答えが返ってくる。そんな感じの短編集です。
読み手の好みで好きな作品は異なるでしょうね。
『Closet』はミステリそのもので、ラストにはちゃんとどんでん返しも用意されています。ミステリ好きはこの話が一番というでしょう。
幻想的な話や不思議な世界観が好きな人は、『冷たい森の白い家』あるいは『神の言葉』でしょうか。
コメディチックなドタバタ劇が好きな人は『血液を探せ』や『堕ちる飛行機の中で』をあげるでしょうし、実話系ホラー好きは『むかし夕陽の公園で』となるに違いない。
こんな感じでテイストはバラバラです。でも、これに一体感をもたらす魔法の言葉があって、それが〝世にも奇妙な物語にありそう〟です。
これを念頭に改めて見直してみると、世にも内で映像化されてもおかしくないものばかり。むしろ映像化されてるのを見てみたいですね。
というわけで、世にも奇妙な物語が好きな人はきっと楽しめるでしょう。いずれも読みやすく、手頃な娯楽作品として申し分ないです。


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