
感想 ★★★★★
法月綸太郎シリーズの長編作品。このシリーズの短編は本格ミステリのテイストが強く、この作品も謎解きに主眼をおいたものかと思っていました。
でも違いました。本格ミステリというよりもハードボイルド小説に近くて、主人公があちこち動き回って調査をするうちに、真相が見えてくるといった構成でした。
あらすじ
物語は娘を殺された父親の手記から始まる。そこには娘を殺した相手を見つけ出し、殺害するまでの経緯が詳しく書かれていた。そして本人は自殺をはかる。
書かれていることが本当か確かめるため警察が捜査をすると、手記通りに殺害された男の遺体が発見される。
手記の内容が真相として事件は処理されようとするが、手記を読んだ法月綸太郎は不審な点を見逃さなかった。さらに独自に調査を進め、驚愕の真実に辿り着くのだった。
感想
本格ミステリの場合、天才的な探偵が一気に謎を解き、最後にその理由を説明するものが多いです。この作品はそれとは違って、真相に至るまでの過程を楽しむことができます。
物語の結末は後味が悪いので好き嫌いはわかれそうです。小説としての出来がいいので傑作といっても差し支えないでしょう。作品のテーマ、構成がよくてドラマ性がありました。小説を読んだという感じがします。
ただ一つ疑問に思ったのは、主人公を法月綸太郎にする必要があったのかということ。この作品はシリーズものの一つにせず、独立した作品にするべきだったのでは。
最後のシーンで主人公が犯人に対してとる行動。感情的には正しいが倫理的には正しくない。
僕はその行動を支持するけれど、それをやらすなら、この作品のために主人公を用意した方がよかったのではないでしょうか。
他の作品にも登場し、著者を代表するキャラクターにやらせたのはどうだろうと、少しだけ思いました。
内容に関しては何の不満もありません。読み応え抜群で満足です。


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