
感想 ★★★★☆
核シェルターに閉じ込められた四人の男女が、脱出のため謎解きをする本格ミステリ。
破綻なく練られた良作という印象で、傑作というほどの驚きや感動は得られなかった。
謎解き部分は面白かったけれど、ストーリーについてはどうだろう。一癖あるキャラばかりだったのもあり、話にのめり込むほどではなかったですね。
あらすじ
目を覚ますと謎の空間にいた男女四人。彼らはお互い顔見知りだった。それから記憶を探り、ここが地下に作られた核シェルターであると気づく。
唯一の脱出口は固く閉ざされてり、閉じ込められたことを知る。
絶望的な状況にパニックに陥る四人。なぜこんな目に遭わなければいけないのだ、どうやったら脱出できるのだ。
そんな中、壁に書かれた文字を発見する。〝お前たちが殺した〟。彼らはなぜ自分たちが監禁されたのかに思い至る。
まさかあの件が関係しているのか――。彼らは旅行中に一人の女性の死に関わっていた。しかしあれは事故だったはず。現に警察も事故として処理した。
だが、もし事故じゃなかったとしたら、殺人だったとしたら……。少なくとも監禁犯はそう考えている。
彼らはここから脱出するため、事故を再検討し推理を始めるのだった。そして最後に驚愕の真実が明らかとなる。
感想
今回久しぶりに再読しました。メイントリックは記憶に残る斬新さがあって覚えていましたが、それ以外はほとんど忘れていた。
〝見知らぬ場所に監禁され、謎解きをする〟
こういうデスゲーム的な設定は、ミステリやホラーではもはや定番ですが、本作はかなり先取りしてると言っていいでしょう。1987年刊行ですからね。
新規性のある作品を、様々発表していた岡嶋二人らしいですね(もちろんクローズドサークルは昔からありましたが)。
古い作品ではありますが、恋愛、嫉妬、痴情のもつれなどが話の肝なので、とくに古さは感じません。そういうのは普遍のテーマだし、新しいも古いもないですもんね。
物語は現在進行形の監禁シーンと、事故が起きた日の回想シーンが交互に語られる構成です。
デスゲームものだと、ハラハラドキドキするようなスリリングな展開が売りですが、本書はあくまで推理小説。
話が進むにつれ、事故当時の詳細が明らかになり、登場人物たちが様々な可能性を検討します。
そういうディスカッションするミステリが好きな人におすすめ。
本書はトリックの意外性が有名な作品です。確かにそれはその通りで不満はありません。僕も何年経っても覚えてたくらい。
ただ若干拍子抜けする部分が無きにしも非ず。それはネタバレにて。
キャラに関しては共感できるタイプではないですね。みんな微妙に性格が悪いんですよ。
別に奇人変人というわけではなく、普通の範疇に入るんだけど、でもそれ故に共感できないというか……。
ある意味、平凡といえるしリアルとも言えるかもしれませんね。
あとがき
今回は再読でしたが、初めて読んだ時と印象は変わらなかった。よく考えられた良作、という印象に尽きます。
意外性もあるし充分楽しめるけれど、傑作と評したくなるような強烈なインパクトはなかったですね。
ネタバレ
問題の事故の件ですが、四人の内の誰かが故意に殺すのは不可能に思えて、どのような方法を使ったのか興味をそそられます。
警察までも事故と処理しており、はてどんなトリックを使ったのかと期待が膨らみます。
主人公が自分でも気付かないウチに殺していた――、というのはとても面白かった。
意外性抜群だし、伏線もあってちゃんと納得できます。
ただ、この不可能状況になるのに、複数の人間が関わっていたのが、個人的には少し残念でもあった。
犯人が一人だけで行う不可能状況が僕は好きなんですよね。そっちの方が驚きがより一層大きいと思う。
本作もそれに期待していたので、拍子抜けしたというのはそういう意味です。
車と遺体の処理はもう1人の男、運搬はヒロイン、実際殺したのは主人公――。これではちょっと関わった人数が多すぎるように感じる。
こういう趣向も、それはそれでありだと思いますけどね。連鎖的に庇い合ってるのも面白いし。


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