比嘉姉妹シリーズ三作目『ししりばの家』澤村伊智

bakemono

感想 ★★★☆☆

人気ホラーシリーズの第三弾。前二作に比べるとちょっと弱い気がしました。普通に楽しめたし、怖さを感じる部分はあったのですが、地味な印象を受けました。

これは前二作が派手すぎたというのもありますね。それと比較するとどうしても弱く感じてしまう。

化物についても展開についても、前二作には及ばなかった。ただ後味はよくて読後の満足度は高いです。

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あらすじ

夫婦の問題に悩んでいた果歩は、幼馴染みの敏明と偶然再会する。意気投合した彼女は敏明の家を訪ねるのだが、そこは部屋中砂だらけの異常な家だった。にもかかわらず、住人に気にする様子はない。

その家を観察する引き籠もりの不審な男。彼はかつてその家に関わったせいで人生を台無しにしていた。そしてこの男は琴子の小学生時代の同級生でもあり、琴子も一緒に怪異と遭遇していたのだった。

琴子は過去の遺恨を解消するため、この家の怪異に挑むのだった。

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感想

今回は家がテーマとなっています。家もホラーではお馴染みのテーマですね。『呪怨』、『残穢』、『シャイニング』など和洋問わず多くの作品があります。

呪われた家に住んだ一家に襲いかかる恐怖、それを著者独特のやり方で物語に仕立て上げています。

まず第一章の見せ方がとても上手かった。家中砂で溢れかえっているのに、住人に気にする素振りがまったくない。かなり不可解で一気に引き込まれました。

そして怖さという意味ではこの第一章が一番怖かった。1つの短編として成立するくらい完成度が高く、思わずゾッとしてしまいました。

怪異の正体を探る段階に話が移ると、そういう怖さは薄まりました。終盤でも恐怖シーンはあるんですが、ゾッとするのとはタイプが違いますね。

このシリーズは心霊ホラーの雰囲気がありつつ、ハリウッド映画的なモンスターホラーが融合した作品で、どんな化物が出るのか、その造形が見所の1つとなっています。

化物の強さ的には〝ぼぎわん〟と〝ずうのめ〟にも引けを取らないか、もしくはそれ以上。

でもインパクトはあまり強くなかった。これは〝ししりば〟の手口が操作系だったからかもしれません。やはり直接的な方が華があるというか、化け者らしさを感じられます。

〝ぼぎわん〟や〝ずうのめ〟は思いっきり物理で攻撃してきますからね。

心霊系の雰囲気なのに化物が物理で攻撃してくる。それが特徴的で面白い部分でもあると思うので、少し物足りなさを感じました。

そして〝ししりば〟には決定的な弱点があって、最後が呆気なかった気がします。

化物の設定や名前の由来は期待通りの面白さでした。ししりばがこうなった原因、目的は納得のいくものでした。

もちろん共感できるとかじゃなくて、異常な論理として理解出来るという意味。名前の由来も予想外でした。

あとがき

今作に真琴と野崎は登場せず、琴子が主役となります。琴子の生い立ちが知れて、今までのイメージががらりと変わりました。

これはこれで良かったのですが、やはり真琴と野崎が見たいなあとも思いました。

それと今回も夫婦の問題が描かれています。これはこのシリーズのテーマなんでしょうね。それか作者の物書きとしてのテーマなのかもしれません。

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