『獄門島』横溝正史 ネタバレあり感想

島

感想 ★★★☆☆

日本のミステリー界に多くの功績を残した横溝正史の代表的な作品。あらゆる場所で好評を得ている本作ですが、好き嫌いでいうと僕はあまり好きではない。

動機が凄いというか、酷いというか、面白い作品とは思うものの、好きな作品とは言えないですね。物語の設定、雰囲気は大好きなんですけどね。

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あらすじ

友人の戦士を伝えるために、金田一耕助は友人の実家がある獄門島を訪れた。死ぬ前に友人は「おれが帰らないと三人の妹が殺される」と金田一に言い残していた。このことを気にかけ島に行くことを決意した。

島を訪れいろんな人から話を聞く内、様々な問題を抱えていることが明らかになる。そして、実際に妹たちが殺害されるに至り、金田一は己の迂闊さを呪う。そして事件解決へ向け奔走するのだった。

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ネタバレあり

見立て殺人、本家と分家の確執、島に漂う雰囲気など、設定作りがとても上手く最後まで飽きさせません。一気に読ませる力量はさすがですね。事件のトリックにはと唸らされたし、意外な犯人には驚かされました。

しかしながら、僕には承服しかねる点がいくつかあり、手放しで称賛することはできません。

金田一は戦友である千万太に、妹を救ってくれと頼まれて鬼頭家を訪れます。にもかかわらず、結局何もできないまま、妹たち三人をむざむざ殺されてしまうのです。

警察が介入できない状況というわけではない。しっかり捜査をし厳重に警備している中、あっさりと殺されてしまいます。

ミステリ小説だから、次々と人が殺されるのは当然と言われればそれまでですが、その無能ぶりにはやはり気分が悪くなります。

それに妹たちが人間というより、無価値な人形か何かのように、平然と殺されてしまうことにも違和感を覚えます。トリックを成立させるための記号にしかなっていないのです。

動機に関してもそう。すでに亡くなっている人間の妄執を叶えるために、何の罪もない妹たちを殺害するというのは、ちょっと理解しかねますね。鬼頭家を存続させるためだと言われても、そんなの老人の戯言だとしか思えない。

文庫の巻末にある中島河太郎の解説によると、江戸川乱歩もその点に関して、納得のいかなさを表明していたと書いてありました。その意見には大賛成です。

以上のような理由で好きにはなれないけれど、横溝正史が偉大な作家であることに異論はありません。これだけ長く読み継がれる作品を描ける作家は、そうそういないでしょう。歴史的価値があるのもわかあります。

あとがき

日本のミステリ界に、こういうテイストのレールを引いたという意味でも、横溝正史はとても重要な作家。

今ではその上を京極夏彦や三津田信三などが走っており、広く親しまれる不変の道となっています。

これから先もまた新たな作家が、その時代に合わせた筐体でこのレールの上を走って行くのでしょうね。非常に楽しみです。

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