感想 ★★★★☆
第四弾となる本作は、今までよりもさらにミステリ色が強かったです。密室、暗号、意外な犯人と、王道の本格ミステリを彷彿とさせる要素が様々あって楽しめました。
このシリーズは、広く浅く知識を披露するライトなミステリと僕は思っていて、そういう油断があったにせよ、結末にはまんまと騙されてしまいました。
さすがに終盤近くになるとわかりますが、まさかこういうことをやってくるとは。まったく念頭になかったので、驚かされました。上手いやり方だと思います。
あらすじ
何万点もの映画グッズを蒐集している男の家が全焼し、希少な品の数々が灰燼に帰した。また別の日、今度は映画グッズを扱う店が燃やされ、連続放火事件の様相を呈して来る。
この二件の被害総額を鑑定することになった莉子と、取材を担当することになった小笠原に加えて、今回は臨床心理士の嵯峨も、次の被害を食い止めるために行動を共にする。
狙われているのが希少価値の高い映画のポスターと判明し、三人と警察が所在地を探っている間に、犯人はそれを嘲笑うかのように犯行を重ねていく。
なぜポスターは燃やされるのか、放火犯は何者なのか、三人は力を合わせて事件の解明に挑む。
感想
本作に登場する臨床心理士の嵯峨敏也は、『催眠』シリーズの主人公とのことですが、僕はそのシリーズを読んでいません。それでも問題なかったです。
様々な蘊蓄が出てきたこれまでの作品に比べると、蘊蓄はわりと少なめで、その分謎解きに重点が置かれています。
密室の謎については、ある先入観にとらわれて見当違いの可能性ばかり考えていました。
暗号の方は全然知識がないので、そういうやり方をするのかと勉強になりました。この暗号のやりとりが面白かった。
肝心の放火については、うーんと思う部分がないでもない。そして文体が軽いためか、分量が少ないためか、傑作という感じはしません。気軽に読める良質なミステリという印象。
でもこれまでの作品の中では一番好きですね。本格ミステリ好きの人も楽しめると思います。
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