『三階に止まる』 石持浅海 

感想 ★★★☆☆

ロジックよりもホラー色の強いミステリを八篇収録した短編集。
どれも読みやすくて暇をつぶすには丁度いいものの、際立って面白いと感じる作品はなかった。

卒なくまとめられている作品が多くて、物足りなく感じてしまいます。この中で好きだったのは『心中少女』と『三階に止まる』の二作。

なのでこの二作のあらすじと感想を書きたいと思います。

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『心中少女』

卒業を間近に控えた女子大生の〝アッシャー〟と女子高生の〝ろおれんぞ〟は、心中するためにネットで知り合った。

車内で練炭自殺をすることにした二人は、邪魔者がいない廃墟となった工場跡で決行することにした。

工場跡に辿りついた二人はそこで先客を発見する。カラスに啄まれる女性の死体を発見したのだ。自殺したようには見えないこの女性が、なぜこんなところで死んでいるのか。

推理し始めた彼女たちは、自分も死んでこんな風になりたいかと己に問いかける。

ネットで心中相手を探して、まったく見知らぬ相手と自殺するというのが、現代的で興味をそそられました。

僕にとって新鮮だったのはアッシャーの死にたい理由。〝食い逃げ〟という考え方は今まで生きてきて思いつかなかった。

厭世的というか無気力というか、そんな二人の考え方に現代の若者が抱える病理を垣間見たような気がしました。

短い話だけれど、ロードムービーのような雰囲気があってストーリーとして面白かった。廃墟にあった遺体についても、なるほどと思わせてくれます。

これは良質な短編でした。

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『三階で止まる』

マンションの七階に住んでいる夫婦は、毎回エレベーターが三階で止まることに気味悪さを感じていた。

三階のボタンは押していないし、三階には誰もいないのに必ず毎回止まるのだ。それは夫婦だけでなく、他の住人が乗った時も同じだった。

夫は心霊現象に詳しい友人と共に、この不可解な現象の謎を解こうと調査する。エレベーターに機械的な問題は何もなく、怪奇現象であると断定する。

はたしてその怪現象が起こる理由とは……。

なぜか三階で止まるエレベーター。これは何とも魅力的な謎です。

僕はこの謎を現実的な理由で解決してくれると思っていた。石持浅海のことだから、本格ミステリのような論理的な解決を見せてくれるのだろうと。

そう期待していたため、霊現象とわかった時は少し残念に思いました。まあこれは勝手に期待した僕は悪い。

最初からホラーと思って読んでたら、また違った感想になったかもしれません。ホラーミステリとしてよく出来ていました。

霊現象であることを前提として、その後に示した結末は、それはそれで面白いものでした。

とはいえ、最初に残念に思った気持ちを払拭できるほど凄いかと言われると、そこまでではなかった。

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