感想 ★★☆☆☆
田舎の旧家を舞台にしたホラー小説。因習や仕来りなど、著者が得意とする要素満載で、ザ・三津田信三という作品でした。
なので設定はとても好みだったのですが、如何せん読みづらかった。なんでこんなに読みづらいんだろうと不思議に思うくらいでした。
文庫で460ページとボリュームがあったのもありますが、読み終わるまでに結構時間がかかりました。
サクサク読めるタイプではないですね。
世界観は堪能できたものの、期待が大きかっただけにマイナス面の方が気になってしまいました。
あらすじ
父親が実家の跡を継ぐことになり、五歳の〝私〟は奈良の山奥にある旧家・百巳家の一員となった。
そこで私を待っていたのは、辛く厳しい毎日だった。
実権を握る祖母から体罰を受け、父も義母は私にはまるで無関心。そんな孤独で寂しい幼少期を送る中、因習にまつわる様々な恐怖体験をする。
森の中にあるお堂、そして禁忌とされる山で世にも恐ろしい怪異と遭遇するのだった。
それから数十年後、大人になった私は再び百巳家を訪れる。ずっと百巳家から離れていたのだが、義母が危篤のため帰郷したのだ。
しばらくも経たない内に義母が亡くなり、喪主を務めることなった私は、百巳家独自の葬送儀礼の最中に、またもや怪異に見舞われるのだった。
感想
本書は五、六歳の幼少期と、三十半ばくらいの中年期の二部構成になっています。
幼少期に謎だったことが、大人になって明らかになる構成は好きだし、土俗的な設定も好みです。
刀城言耶シリーズなど、三津田信三のこの手の作品には全幅の信頼を寄せているゆえ、かなり期待して読みました。
ワクワクしながら読み始めたわけですが、まず読みづらさに苦慮しました。
他の三津田作品ではこんな風に読みづらさを感じたことはないんですけどね。それどころか、むしろとても読みやすい。
だからこそ余計に、なんでだろう? と気になってしまった。
それもあってなかなか読み進められず、いつになったら面白くなるんだろうと不安に陥りました。
それでも、物語の世界に入っていけば気にならなくなるだろうと、そう思っていたのですが……。
結論から言えば、読みづらさに関しては最後まで変わらなかったですね。
もちろん、話に夢中になって気にならない部分もあるんですが、印象としては変わりません。冗長でした。
冗長と言っても、蘊蓄が多いとかではなくて(それなら僕はあまり気にならない)、細かく描写し過ぎていたように思う。
一から十までいちいち書いているというか、こんな感じで書かれると読むのが少々しんどい。
なかなか恐怖シーンに辿り着けず、何の話を読んでるんだっけ? となってしまう。これが星二つの評価にした一番の理由。
家の間取りとかも詳細に書いているのですが、正直図が欲しくなりました。細かすぎて逆に分かり難かった。
それともう一つがっかりしたのが、密室の謎が解かれなかったこと。
幼少期、密室内から父親が消失する事件が起きるのですが、中年期にその謎が解かれるものと思っていました。
それが解かれないまま終わってしまった。
これはもしかしたら続編の『百蛇堂』で解かれるのでしょうか。どうなるのか分かりませんが、もし合理的な解決があるのであれば、本書内で明かして欲しかったですね。
ホラー的にはこれでも別に問題はないのかも知れませんが、ミステリ好きとしてはがっかりの方が強い。
マーモンドウという化物についても結局謎のまま終わります。こちらに関しては、別にこれでもいいのかなという気もします。
あとがき
内容に関しては好きでした。百蛇堂も百々山も雰囲気があってよかったし、怪異や化物に不気味さもありました。
三津田作品に求めるものはちゃんとあり、その点については満足。
続編の『百蛇堂』は、本作と密接な関わりがあるようなので読むつもりですが、同じように読みにくかったらと思うと、少々気が引けますね。
ページ数も本書より多いみたいだし、読みやすくなってるよう願うばかり。
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