感想 ★★★★★
四つの話が収められたミステリ、ホラー短編集。いずれの話も遊びをテーマにしています。隠れた名作だと思いますね。ミステリ色の強いものもあれば不気味なホラーもあって、どの作品も趣向が凝らされていました。
あらすじと内容
『ぬいのファミリー』はぬいぐるみ遊び、『蛇と梯子』はすごろく、『黄昏時に鬼たちは』は隠れ鬼、『ホーム・スウィート・殺人』はテレビゲーム。
いろんな話を雑多に詰め込むのではなくて、テーマが統一されていたので、きれいに整理整頓されたショールームのような短編集でした。
『隠れ鬼』はミステリとして非常によく出来ていました。『蛇と梯子』は設定に惹かれました。映画『ジュマンジ』のホラー版といったノリです。『ぬいのファミリー』と『ホーム・スウィート・殺人』は中盤で結末が予想できるものの、ホラー小説として一定の質は保っています。
どんでん返しのある短編ミステリ小説
話としては『蛇と梯子』が一番好きです。遊びというテーマがもっとも面白く伝わる作品でした。そして、ミステリ小説ファンとして見逃せないのが、『隠れ鬼』。
この小説には思わぬ結末が用意されていて、油断していると驚愕すること必至です。著者の山口雅也は言わずと知れたミステリ作家。最後のどんでん返しなどはさすがの出来映え。
引きこもりたちが社会復帰するためのレクレーションとして隠れ鬼をする話で、その最中に殺人事件が発生します。被害者は隠れ鬼に参加していたメンバーの一人。
刑事の大隈はこのわけのわからないレクレーションに戸惑いつつ捜査を開始する。関係者を一同に集めて事情聴取を行うのだが……。
引きこもりが隠れ鬼をするという設定がまず面白いですね。しかもその設定をちゃんと生かしたミステリになっていて、これには唸らされました。
物語の構成の仕方でミスリードしており上手さが光っています。読み返してみると伏線もちゃんと張られていました。読んで損はない作品。
最後に
ホラー小説が苦手じゃなければ、買って満足できる短編集です。世にも奇妙な物語が好きな人におすすめですね。ホラー作品にはそんな感じの雰囲気があります。どの作品も捻りがきいているし、きっと気に入ると思いますよ。
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