
感想 ★★★★☆
ゆるい空気感を楽しめるコージーミステリ。七つの話が収録された連作短編集で、どの話も型が決まっています。
フリーターの仲良し三人組の元へ悩みを持った美女が訪れ、その謎を解決するというスタイル。
型が決まっているため水戸黄門のような安心感があります。その反面、同じ展開の繰り返しなので、連続で読むと飽きてしまいます。
一気読みするよりも、寝る前に一話みたいな読み方の方が向いていますね。
あらすじ
牛丼屋で働くシュンペイの元へ突然美女が訪れ、悩み相談を持ちかける。彼女らは皆、超能力で悩みを解決できるとの噂を聞きつけ、彼を頼っていた。
だが、シュンペイに超能力などない。あるのは彼の友人のヨーノスケ。しかしみんな大きな勘違いをしていた。
ヨーノスケに超能力があるのは事実だが、何の役にも立たない些細な能力でしかないのだ。当然悩みを解決できるはずもない。
とりあえず話だけは聞くことにし、詳しい事情を知ると、もう1人の友人であるイッカクが余計なことを試みる。
イッカクはミステリオタクで、推理によって悩みを解決しようとするのだ。一見まともな推理と思えるのだが、その結果は果たして――。
感想
本書の魅力はなんといっても3人のキャラクター。
主人公は牛丼屋で働くフリーター。脇を固めるのは、彼の友人であるミステリオタクと超能力者。ユニークなのは2人ともポンコツな点。
ミステリオタクのイッカクはその読書経験を活かして、それっぽい推理を披露するも、ことごとく外します。
超能力者のヨーノスケは確かに能力はあるけれど、発動するまでにかなりの時間を要します。手を触れず割り箸を割るのに三十分もかかる始末で、主人公から低能力と揶揄されている。
この構図がユニークで読んでいるとほのぼのした気持ちになります。
そんな仲良し3人は共同生活しており、住んでいるのは元倉庫だった広くてぼろぼろな場所。若い時にこんな生活してみたかったなあと、憧れとうらやましさを感じさせます。
お金も彼女も特別な能力もない。何も持ってないけれど、信頼できる友人がいる。そんな若者たちの青春小説として読むこともでき、非常に好感度が高いです。
尚、ミステリの形式をとっていますが、ミステリ的な面白さはありません。謎はほんの些細なものし、推理は披露されるものの、的外れで当たらないのです。
だからアンチミステリといえますね。そういう意味での面白さもあります。
ちなみに、ヨーノスケの超能力もすべてが分かった後に発動するので何の意味もない(笑)。
あとがき
本書は彼らの滑稽なやり取りを楽しむ小説。日常系のゆるい話が好きな人におすすめです。その手の作品が好きな人は、きっと気に入るでしょう。


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