感想 ★★★☆☆
アニメ化もされ人気となった古典部シリーズの第二作。前作『氷菓』よりもミステリ色が強いので、ミステリを期待して読んでも拍子抜けしないと思います。
既視感があることは否めないながら、動機の面などにこのシリーズが持つ雰囲気が反映されており、特徴が出ています。
読者を驚かせようと工夫しているのもわかって、好感度が高い。
あらすじ
夏休みも終わりにさしかかった頃、奉太郎たち古典部の面々は、映画の試写会に招待される。それは2年F組が文化祭へ向け自主制作したミステリー映画だった。
実はこの映画、脚本担当の生徒が体調を崩してしまったため、問題編しか制作されていない状態。古典部が招かれたのは、この映画の解決編を推理してもらうためだった。
奉太郎たちは映画関係者から話を聞いて回り、解決にふさわしいストーリーを模索する。
感想
著者いわく、バークリーの『毒入りチョコレート事件』のオマージュとして書いたとのこと。
『毒入りチョコレート事件』は秘密クラブのメンバーが、ある事件の推理を順番に披露しては否定され、というスタイルで進んで行く。
本作でもそれと同様、映画関係者が自分が思う解決編を披露しては、奉太郎がそれを否定し、最後に彼が真相を明らかにする。
映画の中で描かれているのは密室殺人。それぞれが披露する推理は大したものではなく、他の作品で見たことあるものも含まれていました。
なので、この形式の良さを存分に楽しめたかというと、残念ながらそうではなかった。
ただ、先行作品との違いを出そうとしているのは窺えるから、好意的に読み進められました。
動機について
この作品は高校生しか出てこない青春ミステリです。
この年代の思惑、優しさだったり、悪意だったりにスポットを当て、トリックに生かしている点は上手いです。
斬新なトリックというわけではないし、驚愕を覚えるような真相でもないですが、青春ミステリとしての良さを感じられます。
読後感も悪くないし、若い人に人気なのもわかりますね。


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