『ぼくと、ぼくらの夏』樋口有介

感想 ★★☆☆☆

第八回サントリーミステリー大賞読者賞受賞作。主人公の高校生がヒロインの女子高生と共に自殺した同級生の謎を追う青春ミステリ。

本格ミステリのように論理的に謎が解かれるタイプではなく、徐々に真相があきらかになっていくハードボイルドテイストの作品。

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感想

主人公は刑事の父親と二人暮らしの高校二年生で、周りの人から感情がないと揶揄されるような達観した性格。自分から積極的に行かないのになぜか女にモテモテという設定は、村上春樹の小説に登場しそうな感じ。

そういうキャラクターがハードボイルド作品の王道かもしれないけれど、高校生だと違和感ありまくり。おまけに煙草は吸うし酒も飲むわで、現代の十代の人はあまり共感できないでしょう。

ヒロインはヤクザの娘で勝ち気な性格。冷めた主人公がヒロインに振り回されながら事件の謎に挑んで行く。 こちらについても、どこかで見たことあるような展開。

最近の作品は読んでないので何とも言えませんが、この人の初期の青春ミステリは全部同じような感じなので、真新しさは何もない。どれも一定の水準を満たしているから楽しめるけれど、一作読めばそれで充分でしょう。

どの作品もそうだし本作にも言えることですが、煙草の扱いに古さを感じます。煙草を吸うのがかっこいいことのように書いているふしがあって、しかも何度もそういう場面が出てきます。

僕はかつて喫煙者だったから煙草について理解はあるつもりですが、それでもくどく感じてしまう。

本作の主要人物は全員煙草を吸いますが、なぜみんな吸う必要があるのかわからない。主人公は父親の前でも平気で吸うし、刑事の父親がなぜそれを止めようとしないのか。刑事が未成年の息子と一緒に煙草を嗜むなんて、いくらなんでも不自然すぎるでしょう。

この作品だけならまだしも、他の作品でも馬鹿の一つ憶えみたいに煙草が出てきて、似たようなキャラクターとストーリー展開なのでがっかりしてしまう。例え面白かったとしても、自己模倣を繰り返しているだけではないのか。

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あとがき

ミステリーと冠した賞を受賞してますが、ミステリとしてはたいした作品ではないです。ただ、主人公とヒロインのやり取りは面白いので、青春小説としては悪くない。

煙草に関して意味不明な点が多くて残念ですね。完全に昭和から平成初期くらいの価値観です。だからこそ、その時代の価値観を知るには良いかもしれません。

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