青春ミステリシリーズ『秋期限定栗きんとん事件』米澤穂信

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感想 ★★★☆☆

小市民シリーズの第三弾となる本作は、今までの連作短編とは異なり長編となっています。しかも語り手が小鳩だけではなくもう一人います。

そして扱っている事件は連続放火。日常の謎シリーズですが、罪という意味では重罪。文庫本も上下巻に別れていて何かと異色な作品となっています。

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あらすじ

小佐内さんと互恵関係を解消した小鳩は、他の女の子と付き合いだして楽しい日常を送っていた。一方の小佐内さんは新聞部の一年生・瓜野と付き合い始める。

瓜野は誰にも見向きもされない校内新聞に不満を感じており、もっと部の価値を高めるためにスクープを探していた。

そんな中で起きた連続放火事件に、瓜野はのめり込んでいく。事件の法則を見つけ出した彼は、自分で犯人を捕まえようとする。

新聞部の部長を通してそのことを知った小鳩も、犯人が小佐内さんではないかと疑い、徐々に事件と関わっていくことになるのだった。

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感想

本作では『夏期限定トロピカル事件』が終わった秋から、翌年夏頃までの約一年間が描かれています。

小鳩のパートでは彼女との交際の様子を綴りつつ、その合間に日常の謎がいくつか出てきます。そして瓜野のパートで放火事件の謎に迫っていくというスタイル。

こういう事件の場合、普通は犯人の目的や法則が気になるはずだけれど、全然関係のない遠い事件のように描かれているため、そこには惹かれませんでした。

気になるのは小佐内さんが関わっているかどうかの一点だけ。

事件自体にはあまり存在感がなく、小鳩と瓜野の青春小説といった印象が強いです。長くなっているのも恋愛や部活動の描写が多いから。

それでも日常の謎(連続放火は重罪ですが)だけで、この長さを持たせたのはさすがですね。ただ事件についてはうーんと思うところがいくつかありました。

最後に明かされる結末は前作と同じように毒気があります。

あとがき

本作を読んで思ったのは、やはり主人公の二人は性格が悪いなあということ。

とりあえずこのシリーズは本作までしか出ていないようですが、これで完結なんでしょうか。

結局このシリーズで何がしたかったのか、今一つ謎に感じてしまいます。

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