ノワール小説 『ブラック・ダリア』 ジェイムズ・エルロイ

dahlia-3548675_640

感想 ★★★☆☆

アメリカで実際に起きた未解決事件がもとになった作品。著者のジェームズ・エルロイの作品は残酷な描写が特徴的でノワール小説、暗黒小説などと呼ばれています。

ハードボイルド小説と何が違うのか調べてみたところ、どちらも犯罪に関することなので、それほど明確な違いはないようです。ただ、文体には違いがあるらしい。

ハードボイルドの場合は主人公の心理描写がほとんどなく、乾いた文体と言われます。ノワールの場合はそれがあって、主人公の内面が垣間見えたりします。

あと、ハードボイルドは主人公が私立探偵なのがお決まりで、ノワールは刑事や犯罪者などいろいろ。

スポンサーリンク

あらすじ

本作は主人公のバッキー・ブライチャートの視点で語られます。特捜課に配属された彼が強盗犯の捜査中に、エリザベス・ショートの惨殺遺体と遭遇し、後にブラック・ダイア事件と呼ばれるこの事件に関わって行きます。

バッキーにはリーという相棒刑事がいて、最初はリーが事件にのめり込みます。それから徐々にバッキーもこの事件にとりつかれることになる。

スポンサーリンク

感想

ブラック・ダリア事件を中心に描かれるのは間違いないんですが、ミステリのように事件自体が顔になっていません。あくまで主人公バッキーの物語になっています。

それ以外のサイドストーリーも多く複雑な流れのため、ブラック・ダリア事件目当てで読んだ人は不満に感じるかも。第一部はバッキーとリーの出会いからコンビを組むまでの話で、事件は出てきません。

そういう構成だと知らなかったから、回りくどくて長いなあと感じながら読んでいました。物語に引き込まれたのは、中盤以降になって事件の核心に迫ったあたりから。

本作は未解決事件がもとになっているので、どういう終わり方をするのか気になりました。曖昧なまま終わらせるのかと思っていたら、ちゃんと解決を示しており、ミステリとして楽しめました。

ラストに残酷なシーンがあって後味は悪いです。

殺害されたエリザベス・ショートが、どういう人物だったか詳しく書かれていたのがよかったです。

この頃のロサンゼルスは、ハリウッド女優になることを夢みて田舎から出てきたものの、結局それが叶わず、お金のために娼婦になってしまう女性が多かったようだ。読んでいて悲しい気持ちになりました。

あとがき

50年代ロサンゼルスの暗部をリアルに体験できる小説でした。暗くて重い話で、暴力描写や残酷なシーンもあるため、読んでいてつらい気持ちになる時もあります。

本作を読む人はノワールを目当てに読むと思うので、満足できるでしょう。ただ、長いうえに流れが複雑なので、海外小説を読み慣れていないときついかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました