『ビッグ・ノーウエア』 ジェイムズ・エルロイ

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感想 ★★★☆☆

50年代ロサンジェルスの暗部を描いた著者の代表的なシリーズ〝暗黒のLA四部作〟の二作目。三人の主人公を軸に話が進んで行き、途中からその三本の線が一本に交わるという構成。

様々なエピソードが絡まりあう重層的な作品で、読みごたえは充分だけれど、その分複雑なので関係性を理解するのに苦労します。

本作は一気読みした方がいいです。電車の中でちょっとずつだと誰が誰だかわからなくなる可能性が高い。

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あらすじ

1950年正月、惨殺された白人男性の遺体が発見される。その事件を捜査することになったのは、若くて頭脳明晰な保安官のアップショー。被害者の詳細が明らかになっていくうち、彼は違法捜査も辞さないほど、この事件にのめり込んで行く。

その後、同じ手口で殺害された遺体が発見され、連続殺人事件へと発展する。アップショーは被害者たちの繋がりを求めて捜査するが、なかなか糸口が見えてこない。

一方その頃、ハリウッドにいる共産主義者を排除しようと、アカ狩り捜査が行われていた。警部補のコンシディーンは、この捜査で活躍して昇進しようと意気込んでいた。彼は息子の親権を巡って妻と裁判中で、社会的な地位を必要としていたのだ。

元警官のミークスは、マフィアのボスのもとで始末屋として働いていた。汚い仕事に最適と判断され、彼もアカ狩り捜査に加わることになる。

共産主義団体にスパイを送り込むことを目論んでいた、コンシディーンとミークスはアップショーに目をつける。こうして、三人は仲間となった。

アップショーはスパイとして働きながら、殺人事件の捜査も行っていた。やがて共産主義団体と殺人事件に意外な共通点を見つけ、事件は思いもしなかった結末を迎える。

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感想

文庫本の上下巻合わせて八百ページ近くある作品。登場人物も多いし、複雑な構成のため手軽に読めるタイプの小説ではないです。海外小説なので当然、人物名も場所の名前もカタカナ。覚えるのに苦労します。物語の内容を含め好き嫌いが別れそうです。

よくこれだけ複雑な物語を破綻なく展開させられるなあ、とその構成力に脱帽しました。三本の線が混じり合い、少しずつ事件の全貌が見えてくる。こういうやり方は海外ミステリでよくありますね。読み難さを感じることもあったけれど、結末には意外性があってよかった。

三人の主人公の内面を深く掘り下げているため、後半の展開にはいろいろ感じるものがありました。ジェイムズ・エルロイの特徴でもある暴力描写は本作でも健在。

犯行方法はこういった猟奇殺人の中でも、かなり特殊な部類に入るのではないでしょうか。遺体に噛み傷があった件ですが、僕は今まで読んだことなかったし、そんなこと思いつきもしませんでした。まさに異常といっていい。

あとがき

サイコミステリとして楽しめましたが、犯人に至るまでの過程が複雑すぎて、本格ミステリのような鮮やかさはなかったです。

最後に延々と犯人について語っている部分があって、これが説明的で冗長に感じました。サイコミステリや警察小説好きでも、好みが別れるのは確か。

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