感想 ★★★☆☆
直木賞を受賞しているミステリ作家・北村薫。本書は通称、『円紫さん』シリーズと呼ばれる初期シリーズの第三作目に当たる作品。前二作は短編集だったのに対しこちらは長編となっています。
あらすじ
〝私〟の後輩である女子高生が、文化祭の準備中に屋上から転落死する事故が起きる。死亡した女子高生の親友・利恵から相談を受けた『私』は、事件の調査を開始する。そして円紫さんによって事件の真相が明らかになる。
感想
『円紫さん』シリーズは、主人公の女子大生『私』が遭遇する謎を、落語家の円紫さんが解く日常の謎系ミステリ。『私』が語り手役で円紫さんが探偵役。
基本的にほのぼのした雰囲気なので、ミステリが読みたいけれど陰惨な殺人が起こるのは苦手、という方にはぴったりなシリーズとなっています。
今作もそのスタイルは同じですが、円紫さんは終盤にちょっと登場するだけで、ほとんどが『私』の物語です。ミステリというよりも『私』の日常を描いた青春小説といった感じ。
何と言っても事件の真相が印象に残ります。
悲しく切ないもので、深く心に刺さってくる。 読み終わった後、しんみりしてしまいました。この結末は辛いですね。
あとがき
冗長に感じる部分もあったけれど、楽しく読めました。わけもなく寂しい気分になる秋の雰囲気を象徴するかのような物語でした。
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