『理由あって冬に出る』 似鳥鶏

school

感想 ★★☆☆☆

鮎川哲也賞で佳作入選した著者のデビュー作。高校生が主人公の青春ミステリで、ゆるりとした雰囲気の日常の謎系です。

本格ミステリに特化した賞で入選しただけに、メインの謎についてはちゃんと本格ミステリしていました。

とはいえ、全体的にみるとミステリ小説としての巧みさに欠けると思うし、熟練した作家のような小粋で軽妙な文章でもなかったのです。

一線で活躍する作家のものと比べると、一歩劣るかなあという印象。

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あらすじ

主人公は美術部の高校一年生・葉山君。部室は吹奏楽部や演劇部などが集まった芸術棟にある。そこへ幽霊が現われるという噂がもちあがった。

部員たちが怖がって練習に支障を来すようになったため、部長の高島先輩と部員の秋野麻衣は、幽霊などいないと証明するため夜の芸術棟に潜入する。

彼女たちと知り合いだった葉山君も加わって、幽霊が現われるのを待っていると、なんと本当に出現してしまって驚く一行。いないことを証明するつもりが、反対にいることを証明するはめに。

困った葉山君は頭脳明晰の伊神先輩に相談。変わり者の彼はこの一件に興味を惹かれ、真相解明へと乗り出す。

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感想

幽霊事件の真相を探る話は好きだし、学園ミステリも好きなので期待して読みました。でも残念ながら、お気に入りの作品とはなりませんでした。

まず冒頭に説明が多かったように思います。地の文で自分のことや学校のことを長々と説明されると、ちょっと退屈してしまいますね。会話を入れるなり、行動でわからせてほしかった。

物語が動き出してからは、飽きないようになっていました。第一の事件が起きて、それが解明したかと思ったらもう一つ事件が起きて――といった具合で、結末まで興味をそがれない展開。

第一の事件は意図的に稚拙にしてあって、それを第二の事件の伏線にしていたのは上手かったです。第二の事件はトリックが工夫されており、本格ミステリらしさがあります。

動機に関しては、高校生がそんなマザー・テレサみたいな慈悲深い真似をするのかと疑問に感じました。

そして最後のエピソードも唐突。本筋とは関係ない出来事が最後に絡んできて、それが突拍子もないものに感じました。

そう繋がるのか! と驚くよりも、無理矢理くっつけたような印象が強かったです。

この辺がもっと上手くいってたら、より良い作品になっていた気がします。好きなタイプの作品だけに、そう思っちゃいますね。

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