18世紀ミステリ完結編 『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』皆川博子 あらすじと感想

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感想 ★★★☆☆
『開かせていただき光栄です』から始まる三部作の完結編。前二作の舞台はイギリスでしたが、今回は独立戦争中のアメリカ。この激動の舞台で、エドたちの物語は完結を迎えます。
ミステリとしては広義のミステリ。ある謎があって、それを軸に話は進んでいきますが、本格ミステリのように謎解きが主眼ではないです。
僕は当時の様子を描いた歴史小説として楽しめました。このシリーズは、18世紀の空気感をリアルに感じられるのが良い。これで終わってしまうのは残念ですね。
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あらすじ

新聞記者のロディは、投獄中のイギリス兵エドワード・ターナーに会いに行く。エドには大富豪の息子アシュリーを殺害した容疑が掛かっている。なぜ彼はアシュリーを殺したのか。
エドとアシュリーは戦地へ移動する際、行動を共にしていた。その間にアメリカ先住民とのもめ事や、軍人の不審死、スパイ疑惑など、様々な問題が起きていた。
そんな中、エドとアシュリーは良好な関係を築いていた。それなのにいったい何が起きたのか。
ロディとエドが監獄で語り合う内に、事件の裏に隠された陰謀が明らかとなるのだった。
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感想

エドとロディが邂逅する現在のパートと、アシュリーの手記で綴られる過去のパートが、交互に展開されます。そして途中からは、同じく行動を共にしたエドの相棒・クラレンスのパートもあります。
手記の方で移動中に起きた様々な事件が語られ、最後に現代のパートですべての謎が解決する構成。
最初はなかなか物語に入っていけませんでした。その主な理由は、登場人物の名前を覚えるのに苦労したため。

カタカナの名前を覚えるのがそれほど得意ではないし、アメリカ先住民は《美しい湖》みたいな感じで、独特な人物名となっています。

それが現代と過去に別れて語られるので、各人物の関係性をすんなり把握できなかったです。とはいえ、物語が進むにつれ問題なく理解できましたけどね。
思えば過去作の方が複雑だったような気がします。
謎についてはスパイ映画のような印象。陰謀を持った何者かが事件を起こし、物語が進むにつれ、次第に真相が明らかになっていく展開。本格ミステリ的な謎ではなく、謀略合戦という感じですね。
特筆したくなるほど凄い仕掛けはありませんでしたが、いくつもの事件をまとめ上げ、クライマックスへと持って行く構成力の高さはさすがです。

歴史小説として

過去シリーズでも思ったことですが、本作でも勉強になることが多かったです。不勉強ゆえ、僕はアメリカ独立史について詳しく知りません。
アメリカの独立は、イギリス本国とイギリス植民地の戦争。同じイギリス人同士の戦争だったようですね。そして本国側はアメリカ先住民を味方につけて戦っていた。
先住民をインディアンと呼ぶのが、差別にあたることすら僕は知りませんでした。(そういう批判があって、大リーグの『インディアンズ』が『ガーディアンズ』に変更されるみたいですね。)
その他にも、イギリスが先住民に対してどんなことをしたか、どんな感情を持っていたかも知りませんでした。
アメリカ先住民についてもそう。名前の付け方や暮らしぶりなど、へえと勉強になることが多かった。
だから当時の情勢を描いた歴史小説として、僕は大変興味深く読めました。アメリカ建国の歴史について、詳しく学びたくなりましたね。
イギリス本国が負けて大陸軍が勝利した結果、アメリカが独立国になったわけですが、それから先住民がどういう経緯を辿ったのか。この辺りのことはもっと詳しく勉強したいと思いました。

あとがき

シリーズの完結編ではありますが、レギュラーメンバーで登場するのはエドとクラレンスの二人。なので本作からいきなり読んでも、ストーリー的には問題ありません。
ただ過去作も読むつもりなら、本書から読まない方が無難ですかね。刊行順に読むのとでは読後感が全然違ってくると思います。
でも本作でエドに興味を持って、それから1作目を読むのも、それはそれでありかも知れません。『開かせていただき光栄です』はより楽しめる可能性があります。

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