『ベルリンは晴れているか』深緑野分のあらすじと感想

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感想 ★★★★☆

第二次大戦直後のベルリンが舞台の小説。謎と解決はあるものの、ミステリとしてではなく、戦争小説として読むべきですね。

同じく第二次大戦を舞台にした前作、『戦場のコックたち』は連作短編ミステリの形式でした。謎と解決に興味を惹かれるものもありましたね。

でも本作は完全に戦争小説として読むべきだと思います。当時のベルリンの様子を
描いた物語としては、満足感が高い。
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あらすじ

戦後ベルリンは四カ国に分割統治されることになった。そんな混乱期に、歯磨き粉を使った毒殺事件が起きる。

ナチスの残党によるテロの疑いが生じ、ソ連の専門組織が調査に乗り出す。

その歯磨き粉を被害者に売ったのは、ドイツ人の少女・アウグステ。彼女は米軍の食堂で働いている。

ソ連に尋問されたアウグステは、犯人と目される被害者の甥・エーリヒを探し出し、接触するよう命令される。立場の弱いアウグステに拒否権はなく、従うよりほかない。

しかし、彼女も個人的にエーリヒに会いたいと思っていた。

捜索の案内役としてあてがわれたのは、泥棒のカフカ。こうして二人は様々な人種で混沌とするベルリンを、駆け巡るのだった。
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構成

『戦場のコックたち』はアメリカ軍人から見た第二次大戦。そして今作はドイツの
一般市民から見た第二次大戦を描いています。

物語のメインは、様々なトラブルに見舞われながら、終戦直後のベルリンを駆けずり回る話。そしてその合間に、回想の形で大戦中のドイツの様子が語られます。

こういう構成なので、戦中戦後のドイツの情勢がよく分かり勉強になります。大戦中の一般市民の様子を知りたい人は、興味深く読めるでしょう。

ストーリー

メインの話では、捜索を通して様々なトラブルに見舞われます。米軍の施設に拉致されたり、犯罪地下組織に監禁されそうになったりと、困難の連続。

それらを通してアウグステとカフカの絆が深まります。そして色んな人との出会いもある。

おのおのが抱える過去、戦争によるトラウマなんかも明らかになります。ロードムービーのような雰囲気がありますね。

回想の方では、ドイツ人のアウグステの目から見た戦時中の様子が語られます。
次第にヒトラーに傾倒していく国民たち、それに伴い迫害されるユダヤ人たち。アウグステの両親は共産党員で、彼らも処罰の対象となります。

占領国からやってくる労働者、地下活動を続ける共産党員、ますます権勢を強めるナチスの非道なやり口。これらの様子が臨場感を持って語られます。

ミステリとしては、最初に歯磨き粉による毒殺の謎が提示され、最後に真相が明らかになります。

なので講義のミステリーではありますが、これについては賛否両論ありそうですね。

あとがき

前作に続いて骨太で重厚な物語でした。戦争を描いた小説として満足です。ただ、ミステリーとして期待する小説ではないですね。

第二次大戦に興味がある人は、読んで損ないです。

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