感想 ★★★★★
ミステリのオールタイムベストや各種ランキングで、必ず上位に食い込んでくる本書。
発表されたのは1942年で今から70年以上前になります。日本では江戸川乱歩などが絶賛しました。
さすがに長く読み継がれているだけあって文句なしの面白さ。
あらすじ
午後六時頃、妻と喧嘩してむしゃくしゃしながら街を歩いていたヘンダーソンは、偶然見つけたバーに入り、隣に座った女に声をかける。
それから二人はレストランに移動し食事をした後、演劇を鑑賞してからまたバーに戻ってきて別れた。ヘンダーソンはただ憂さ晴らしをしたかっただけなのだ。
深夜になって家に帰って見ると、そこには刑事がいて先程まで元気だった妻の死体が。
わけがわからないままヘンダーソンは妻殺しの容疑で逮捕される。しかし彼には鉄壁のアリバイがあった。
妻が殺された時、ヘンダーソンは女と一緒だったのだ。
女の名前や連絡先を知らなかったので、探し出してもらうために彼女の特徴を話そうとする。しかしなかなか出てこない。
一緒にいる間、ヘンダーソンは妻とのことで頭がいっぱいで、碌に女のことを見ていなかった。それに彼女にはなんの特徴もなかった。
ただ一つ、珍しい帽子をかぶっていたことだけしか覚えていなかった。
警察はヘンダーソンの証言通り、二人が行った場所で聞き込みをしたものの、彼を覚えている人物はいても、女のことを見た者は一人もいなかった。
警察は彼に不信感を抱く。罪を逃れるために幻の女をでっちあげているのではないかと。結果、ヘンダーソンは起訴され死刑判決を受ける。
諦めかけるヘンダーソンだったが、一縷の望みをかけて、親友のロンバートに幻の女を探してほしいと頼む。
ロンバートは承諾して調査を開始する。はたして彼は幻の女を探し出すことができるのか。
感想
いやあ、面白かったですね。冒頭の事件で興味を惹かれ、その後の展開も見事でした。
結構ページ数があるんですが、途中でだれることなく最後まで飽きずに読むことができます。
都合よく人が死んだように見えるところがあって、いったいどうなっているんだと思ったんですが、真相を読んで納得。
これには意外性があって驚かされました。
ヘンダーソンの無実を信じて動くのは、ロンバート、キャロル、バージェスの三人。
キャロルはヘンダーソンの愛人。ヘンダーソンと妻との間は冷めきっていて、二人は相思相愛です。このこともあって、ヘンダーソンの妻殺しの疑いは強くなりました。
バージェスは事件を担当した刑事。彼がヘンダーソンを逮捕した張本人なんですが、事件を洗い直す内、だんだんヘンダーソンは無実ではないかと考えるようになります。そしてもう一度事件の捜査をやり直します。
登場人物たちにも味があってよかった。今読んでも普通に楽しめる傑作です。



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