感想 ★★☆☆☆
『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉として上梓された作品。シリーズ化もされており、売り上げも好調とのことで以前から気になっていました。
それとアマゾンの評価でこれほど星一つが多いのも珍しいので、そういう意味でも興味を惹かれました。
あらすじ
物語の舞台は京都でひっそりと店を構えるコーヒー店。そこで巻き起こる謎をバリスタが解決する連作短編ミステリです。
探偵役は女子高生と見紛うほど童顔でありながら、コーヒーに関する知識は一流という女性バリスタ。
主人公はその店に通う若い男性客。その二人を中心に物語が展開されます。謎はどれも日常の謎系の些細なものですが、バリスタの過去が明らかになった辺りから、シリアスな様相を呈して来る。
ミステリ小説として
感想としては意外と悪くなかったというのが正直なところ。低評価があまりにも多いので、もっと酷いものを想像していたのですが、ちゃんと作品として成立していました。
ただミステリとして見ると、低評価なのも納得できて、謎に魅力を感じるものはありませんでした。トリックらしいトリックもないし、真相もすぐにわかってしまう。
しかしそれゆえに、最後のどんでん返しには騙されてしまいました。ミステリとしては安直だったから、このまま何事もなく終わるとばかり思っていた。
まさかそれを狙ってわざと安直にしたわけではないでしょうが、これが目くらましとなって意外な効果をもたらしています。
もしかすると僕と同じ理由で驚いた人もいるかもしれませんね。
恋愛小説として
この作品はミステリーとしてではなく、恋愛小説として読むべきでしょう。そっちを売りにした方が読者の嗜好とマッチすると思う。
根底にあるのは恋愛小説で、物語を進めるためにミステリ要素を加味しました、という感じなのです。なので、純粋に謎やトリックを期待して読むと低評価にならざるを得ない。
売り上げが良いのに低評価が多いのは、そういうミスマッチによるところが大きい気がします。コアなミステリファンが買うような作品ではありません。
それとキャラの行動がハチャメチャな部分もあります。だからライトノベル的な軽い恋愛小説と捉えるべき。それを期待して買ったならきっと満足するでしょう。
あとがき
コーヒーに関しての蘊蓄もあるし、京都のご当地ものとして読むこともできます。そういう意味ではおすすめ。
それにしても、未だにアニメ化されていないのが不思議ですね。真っ先にアニメ化されてもよさそうな内容なのに。
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