『機龍警察』 月村了衛

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感想 ★★☆☆☆

各種ミステリランキングに入っているものや、文学賞に選ばれているものもあるため、このシリーズは以前より気になっていました。

端的に表すなら、近未来を舞台にしたSF警察小説といったところ。パワードスーツでの派手なアクション満載です。

設定だけ見るとアニメ作品のようですが、実際読んでみると文章は硬質だし、登場人物の年齢も高めで大人向けの読み物と言えるでしょう。

期待して読み始めたのだけれど、本作に関してはあまり合わなかったです。

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あらすじ

機甲兵装なるパワードスーツが、戦争やテロに使用されるようになった世の中。警視庁は機甲兵装による犯罪に対抗するため、極秘裏に新型スーツ・龍機兵を開発した。

そしてその操縦士として三人の傭兵を雇う。彼らしか乗りこなせる人間がいなかったのだ。

それでも、警察の虎の子である龍機兵の操縦士を、外部から選んだことには根強い反発があった。彼らの所属する特捜部は、指揮官の沖津ともども警察内部から忌み嫌われている。

そんな状況の中、密造機甲兵装による地下鉄立てこもり事件が発生。SWATと龍機兵が現場に向かい鎮圧に乗り出すも、両陣営の軋轢もあり予想外の事態を招く。

それから事件の黒幕を追って捜査を開始すると、強大な陰謀が潜んでいることが明らかとなるのだった。

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感想

ロボット系アニメのイメージからか、操縦士に選ばれた主人公が苦心惨憺しながら成長していく話を想像していました。なので、それとの違いにまず戸惑った(これは勝手なイメージを持っていた自分が悪い)。

しかしそれを抜きにしても、いったい誰が主人公なのかよくわからない。おそらく、龍機兵操縦士の姿俊之が主人公に当たるのだろうが、そんな感じがしないのです。

本作は神視点で書かれており、いろんな人物に視点が移る。そして視点人物の内面描写もあります。

それゆえ、何人もの人間の内面がわかる反面、主人公らしい際立った存在感を有した人物がおらず、誰にも感情移入しにくい。

ある程度視点が固定されている方が僕は好きなので、今一つ物語にのめり込めなかったです。

著者はもともと脚本家出身ということもあり、様々なシーンが描けるこの書き方を採用したのでしょう。実際、主人公が不在のシーンも多々あり、非常に映像的な作品でした。

だから映像はイメージしやすいけれど、文章としての面白みを感じることはなく、脚本に近い気がしました。

ストーリーについては普通だと思う。面白いか面白くないかで言えば面白いけれど、読んでいて興奮するほどではなかったです。

続編で評価の高い作品もあるので、とりあえず追ってみるつもりでいますが、もし発売直後に読んでいたら、続きを読むか躊躇ってしまうところですね。

あとがき

主人公の名前が〝姿〟というのはどうなんでしょう。まず苗字という感じがしないし、姿という字は文章を書く時に何かと使われる字だから、紛らわしいと思う。

もちろん前後を読めばわかりますが、特別な存在である主人公の名前には向いてないような気がしちゃいましたね。

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