多重解決ミステリ『ミステリー・アリーナ』 深水黎一郎 ネタバレあり

detective

感想 ★★★★☆

様々な解決が提示される多重解決もの。実に十五もの解決案が提示され、すべての案に説得力があるのだ。

この作品の労力を考えると、拍手を送らずにいられません。これは生半可な苦労ではなかったと思う。

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あらすじ

年末の恒例行事となった推理当てテレビ番組・ミステリーアリーナ。見事正解すれば多額の賞金が得られるこの番組に、今回集まったのはミステリーマニアの面々。

問題となる事件が提示され、皆はその犯人と理由を推理する。賞金を得られるのは一番最初に正解した人物のみ、ということで彼らは次々と回答していく。

マニアと自称するだけあって、彼らの推理は裏の裏まで読んだ説得力のあるものばかり。

番組は滞りなく進んで行くが、その裏では不穏な動きもあって……。はたして事件の真相は、賞金は誰の手に。

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以下ネタバレあり

問題となる事件は典型的なクローズドサークル。嵐で閉ざされた館で密室殺人が起き、おまけにダイイングメッセージまでついている。この事件の犯人を回答者が一人一人答えていきます。

本作の新しいところは、まだ事件の全容がわかっていない段階で推理が披露される点。いわば、問題編と解決編が同時進行しているような状態です。

マニアの人たちはこれまでミステリを読んできた経験から、おそらくこういう展開になるだろうと予想して答えていくのだ。これが面白い。

性別誤認、二人一役、人物隠蔽など、主に叙述トリックがメインで、ここまで来ると皮肉のようにも受け取れます(笑)。そのどれもがよく出来ていて感心することもしばしば。

多くの回答が示されるので、中にはそれはどうだろうと思うものもあります。でも、ほんの些末なことから推理を展開していて、細かいところまでよく考えられているなあと、脱帽する思い。

オチに関して

だから途中まで面白く読んだのですが、裏設定の臓器移植云々が本当に必要だったのか疑問。

回答者により早く答えさせる理由づけのためなら、賞金だけで充分だったのではないでしょうか。答えられなかった場合、殺されて臓器移植させられるって、まるで山田悠介の小説みたいではないか。

この設定のせいで、何だか安っぽく感じられたのが非常に残念。賞金獲得を目指した普通の推理合戦とした方が圧倒的によかった。

それでも耐えられるだけの質を備えているのだから。

問題の答えについては、だいたい予想した通りで驚きは感じませんでした。これだけ不正解が続けば、そういうことだろうと察しが付きます。

実は最初の方で一瞬だけその可能性が頭を過ったんですよね。まあ、そんなわけないかとすぐに忘れてしまいましたけど。これはあまり好きなトリックではなかった。

あとがき

僕が一番強く関心を惹かれたのは、螺旋階段の推理。これは非常によく出来ていると思いました。おそらく誰でも1つは、そう感じる推理を発見できると思います。

このようにいろんなことをやっている作品なので、ミステリ好きなら読んで損はないでしょう。

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