感想 ★★☆☆☆
百鬼夜行シリーズのスピンオフに当たる作品。京極堂こと中禅寺秋彦が活躍する百鬼夜行シリーズは、著者の代名詞ともいえる大人気シリーズ。
その妹である中禅寺敦子が本作の主人公です。敦子は本家シリーズにも登場していて、好感を持っていました。
そんな彼女が主人公とのことで、どんな感じなんだろうと興味津々で読みました。結論から言うと少々期待外れでしたね。
あらすじ
世間を震撼させた連続通り魔事件・通称〝昭和の辻斬り事件〟。雑誌記者の中禅寺敦子は、その最後の被害者である片倉ハル子の友人・呉美由紀から相談を受ける。
犯人はその場で現行犯逮捕され、事件は収束へと向かっている状況だが、美由紀から話を聞くうちに敦子は事件に違和感を覚える。この違和感の正体を突き止めるため、敦子は独自の調査に乗り出すのだった。
百鬼夜行シリーズについて
僕が百鬼夜行シリーズを読んだのは随分前で、色んな意味で衝撃を受けました。まずその分厚さに驚き、いざ読み始めてみると知らない熟語ばかりで、辞書を引きながら読んだのを覚えています。
そして内容も凄い。第一作目の『姑獲鳥の夏』を読んだ時は、正直こんなのありかよと思いましたね。
苦労して読み進めて最後に明かされるトリックが、アレですからね。
ちなみに僕は三作目の『狂骨の夢』までしか読んでないです。次作『鉄鼠の檻』の
ページ数を見て尻込みし、放置している内にそのままやめてしまった感じです。
感想
さて、本書についてですが、百鬼夜行シリーズに比べると格段に読み易い。ページ数も250ページほどと少なく、難解な熟語も出てきません。なので新規の人でも手に取りやすいと思います。
残念ながら内容に関して特筆すべき点はないですね。凄いトリックが仕掛けられているわけではないし、真相もわかり易い。動機についても論理的なタイプではありません。
ミステリとして期待すると肩すかしを食らうでしょう。刀についての蘊蓄で話を繋いでる印象を受けました。
本家の百鬼夜行シリーズも蘊蓄は多いですが、根幹のストーリーがしっかりしているため、話を見失うことはありません。しかし本書の場合、ストーリーよりも蘊蓄の方がメインに感じてしまいます。
良くも悪くも中禅寺敦子は常識人なので、破天荒な面白味もない。そういうのもあって、解決編がとてもあっさりしていましたね。
あとがき
今の若い方が、さて百鬼夜行シリーズでも読むか、とはなかなかならないと思うので、そういう意味では今風と言えます。
若い記者と女学生のコンビというのも、入りやすさを意識してのことかもしれません。一度入ってしまえば、京極ワールドにとっぷり浸かることになるでしょう。
思えば京極夏彦の小説を読んだのも久しぶりでした。本当に色んなことを知っていて、読む度にその知識量の凄まじさに驚かされます。
蘊蓄が好きな人、戦後の昭和が舞台の小説を読みたい人は、氏の一連の作品を漁ってみるのをおすすめします。
余談ですが、カバーモデルが今田美桜というのが一番の驚きでした。顔がまったく映っていないのに、よく引き受けたものだ。
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