感想 ★★★★☆
近年まれに見る大ヒットを記録した本格ミステリ作品。出版不況と言われて久しい昨今、ミステリ小説――しかも本格ミステリでこれほど売れたのは、本当に凄いと思う。
この小説の存在は当然知っていたのですが、読むのは今回が初めて。というのも、発売されて間もない頃に例の設定を知ってしまったから。ネタバレされて興醒めしてしまい、何となく手つかずの状態でした。
僕はちょっと思い違いをしていて、〇〇〇のネタがすべてと思っていたのです。でもそんなことはなくて、ちゃんと本格ミステリしてて充分楽しめました。
あらすじ
大学のミステリ愛好会に所属する葉村譲と明智恭介は、映画研究会の夏合宿に参加する。合宿を中止しろとの脅迫状が映画研究会に届いており、これは何かあると踏んだ二人が、首を突っ込んだ形。
そしてもう1人、同じ大学に通う探偵少女・剣崎比留子も、部外者ながら参加することになる。
合宿地は森の中にあるペンション。映画研究会の撮影を見学しながら探りを入れると、1年前の合宿で何かあったことが窺える。
いったい何が起きたのか。合宿中にその件を調べて、探偵趣味を満たそうとする葉村と明智の思惑はしかし、脆くも崩れ去る
一日目の夜、メンバー全員で肝試しを行っている最中に、とんでもない事態に巻き込まれてしまうのだ。
ペンションに立てこもることを余儀なくされ、途方にくれるメンバーたち。そんな絶望的な状況の中で、なんと殺人事件が起きてしまうのだった。皆で協力しなければならないのに、いったいなぜ……。
はたして彼らは生き残り、犯人を見つけ出すことができるのか――。
感想
話題となっている○○○がトリックの肝だと思っていたので、割と序盤に出てきて驚きました。状況設定の装置として使い、尚且つトリックにも絡めており、巧みで正当な本格ミステリです。
てっきり○○○を使ってどんでん返しみたいな、そんなバカミス的なノリなのかと思っていたので、意外でした。
ラノベっぽいという感想もチラホラ目にしていたから、その影響もあったのかもしれません。
特殊設定ではあっても、ちゃんとロジカルに謎を構築しています。真面目な本格ミステリですね。
ただ、すべてに納得できるわけではなくて、「うーん……」と思うところもあります。主にキャラの行動原理についてですが、とある事情があったとしても、そんな行動をとるかなあと首を捻りたくなります。
そういう部分があるにしても、この小説が本格ミステリということを考えれば、完成度の高い作品と言えます。
意味も無く○○○を使っているわけじゃなく、トリックに組み込んで論理的な謎解きを展開しているからです。
この手の設定は好き嫌いが分かれると思いますが、ミステリの各種ランキングで一位を獲得したのは納得ですね。
あとがき
個人的には、「ああ、なるほどね。これはもう絶対あの人が犯人だ」と決めつけて読んでいたため、そうじゃなかったことに驚きました。
どんな方法を使えばあの人がやれるだろうと、そういう視点でしか読んでいませんでした。
本格ミステリファン、特に『十角館の殺人』を読んでる人で、そう考えた人は結構いるんじゃないでしょうか。
最後まで楽しめる作品で満足。シリーズ化しているようで、次回以降も気になりますね。
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