感想 ★★☆☆☆
人気のホラー・ミステリー作家の三津田信三による本格ミステリ作品です。核シェルター内で起きる連続殺人事件で、ガチガチのクローズドサークル。さて、どんな驚きをもたらしてくれるだろうかと期待して呼んだのですが、残念ながら期待外れの出来でした。
ミステリ作家の「私」は大富豪が庭に設置した核シェルターの見学に訪れる。そこには「私」以外にも数人の見学者がいて大富豪と共にシェルターへと向かう。
その最中、空で爆発が起き(核爆弾?)皆はシェルター内に逃げ込む。そして放射能が入ってこないように外部との扉を完全に閉める。
見学者たちは皆初対面でお互いのことを知りながら、これからについて話し合う。シェルターというだけあって、水や食料などはたっぷり備蓄されており、しばらくの間、生活する分には何の問題もない。
だが、ほっと一安心したのも束の間、見学者の一人が遺体で発見され、それから連続殺人の幕が切って落とされるのだった。
ホラー映画についての蘊蓄が豊富
クローズドサークルものは好きなので楽しみながら読むことが出来ました。しかしながら、事件と関係ない蘊蓄がかなり多いので、中だるみしている感は否めない。
ホラー映画についてのやりとりはまだいいとして、作品名を無数に列挙しているのは、ページ数を稼ぐためかと勘ぐってしまう。蘊蓄が嫌いな人は読み飛ばして問題ないです。反対にホラー映画に造詣が深い人にとっては読み応えがあるのかもしれない。
トリックについて
一つ一つの事件のトリックは小粒です。針と糸を使う系の物理トリックで、あっと驚くような趣向が凝らされているわけではないです。
そして肝心のメイントリックですが、これが肩すかしだった。三津田信三のミステリといえばどんでん返しなので、期待していただけに失望感が大きい。
嵐の山荘テーマにおいて核シェルターは究極ではないか、と著者は語っています。その意見には同意するけれど、残念ながら本作ではその究極の設定を生かせていないように思う。
メインの仕掛けがそれだと、「ええ……」となってしまう。刀城言耶シリーズとの落差はあまりにも大きいですね。もし本作が初めての三津田作品なら、刀城言耶シリーズを読むことをおすすめします。本作でのイメージはきっと変わるでしょう。
この設定とホラー映画が好きなので正直僕はそこまで嫌いじゃない。それで星二つにしましたが、ミステリとして見るなら星一つです。がっかりする人の方が多い作品だと思う。
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