一風変わったミステリ小説『虚構推理』城平京 あらすじと感想

kyoko-suiri

感想 ★★★☆☆

ミステリに対して一風変わったアプローチをしている作品です。普通は犯人を特定するためにロジックが必要となります。しかし、この作品では犯人が確定しており、いかに都合の良いロジックを用意するかが焦点となっています。ロジック好きな人におすすめ。

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あらすじと設定

巨乳アイドルの亡霊が夜な夜な暴れ回っている、そんな噂がある街で広がります。その調査に特殊能力を持つコンビがやってきて解決を試みる。

だが、遂には殺人事件まで発生し、事件はますます混迷を極めていく。はたして二人は事件を収束させられるのかーー大雑把にいうとこんな感じで話は進んで行きます。

通常のミステリと異なる点として、妖怪が普通に登場します。主人公の岩永琴子は妖怪とコミュニケーションがとれ、相棒で恋人の桜川九郞は妖怪みたいなもんです。何せ不死身で未来予知まで出来るのだから。

問題の犯人も本当に亡霊。これは最初に明かされるのでネタバレではありません。設定だけみるとファンタジーやSFのようです。

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あくまでミステリ

ミステリらしく謎がいくつか提示されます。亡霊は何者なのか、そもそもアイドルは本当に死んだのか、人物の入れ替えトリックじゃないのか、などなど。とはいえ、それはあくまで小説内の人たちにとっての話で、読者である僕らは真相を知っています。

なぜなら、岩永が妖怪からの情報によって真相を知れる立場にあるからです。主な視点人物が岩永なので、読者も同じように情報を共有出来るわけです。
これでどうやってミステリ的な面白さを出せるのか、それが本作の肝。岩永の目的は亡霊を消滅させること。亡霊の力の源になっているのは、亡霊がいて欲しいと願う大衆の好奇心。この好奇心が無くなれば亡霊は消える。

本格ミステリ的な面白さ

そこで岩永が取った方法が、様々なストーリーを創作すること。つまり虚構です。全部で四つの虚構推理がネット上で披露され、大衆を納得させようと試みます。

このやりとりが実に本格ミステリ的でした。多重解決ものや、どんでん返しの連続みたいな本格ミステリと、同じような読み味があります。真相がわかっているにもかかわらず、虚構のロジックでその面白みを出そうとしているのは、ユニークな試みですね。
作品の性質上、推理の構築で面白いと思うことはあっても、驚きは得られませんでした。推理小説の面白さの本質って何だろう、という考えがよぎって、それを考える切っ掛けになったのが良かったです。

キャラはかなり個性的ながら、僕はそこまで魅力を感じられなくて、キャラクター小説として楽しめるほどではなかったですね。万人受けする作品でないのは確か。多重解決ものが好きな人にお勧めします。

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