刀城言耶シリーズ第一弾『厭魅(まじもの)の如き憑くもの』 三津田信三 

kakasi

感想 ★★★★☆

本格ミステリとホラーが融合した刀城言耶シリーズの第一弾。このシリーズは有名な『首なしの如き祟るもの』以外は手つかずの状態でした。

ページ数が多く内容も濃いので、読むのに時間がかかりそうだったのがその理由。どの作品も評価が高いみたいだから、これを機に最初から読んでいこうと思います。

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あらすじ

神隠しなどの怪異がたびたび起こる山奥の村にやってきた刀城言耶は、いきなり殺人事件に遭遇する。

密室内で山伏が奇妙な恰好で殺されていたのである。その恰好とは、この地の神様とされているカカシ様の姿。

この事件を発端として、次々と不可能殺人が続き、村は胡乱な空気に包まれる。

刀城言耶はこの地の二大勢力である神櫛(かみぐし)家と、谺呀治(かがち)家の人間から話を聞きつつ調査を進める。

谺呀治家は憑き物筋といわれる家系で、代々双子の巫女がお祓いをやっている特殊な家柄。調べを進めるうちに、谺呀治家とこの地には様々な秘密があることが明らかになる。

はたして言耶はこの不可解な連続殺人を解決に導くことができるのか。

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シリーズの設定

このシリーズは戦後の昭和が舞台。怪奇作家の刀城言耶は、怪異譚を収集することを目的に、不思議な伝説の残る地を転々としています。


そんな彼が今回訪れたのは、神々櫛(かがぐし)という名の上記のような村。まず、神櫛家と谺呀治家の人間関係を把握するのに時間がかかりました。

双子の巫女の名前は、皆漢字を変えたサギリという名前、そして両家にはそれぞれ分家があって、さらにその間で姻戚関係があったりしてとにかく複雑。

村の地形も、山があったり川があったり、いろんな名前の道があったりで入り組んでいます。どこがどういう場所なのか覚えるのに苦労します。

文庫には相関図と村の絵図がついていますが、それでも全体像をとらえるのが大変。

空いた時間にちょくちょくだと忘れてしまう可能性もあるので、一気読みした方が良いと思います。

謎とトリックについて

一連の事件を様々な人物の視点で描いており、その技巧を凝らしたやり方には唸らされました。殺人事件はすべて納得のいく合理的な解決です。

例の如く、関係者一同を集めて刀城言耶が謎解きをするのですが、そこからはどんでん返しの連続で、それがこのシリーズの特徴になっているようです。


ある推理を披露しては、それを否定され、あるいは自ら否定して、また新たな推理を披露していく。短い間で一気に多重解決ものをやっているともいえます。

個人的には、最初に提示された犯人に一番意外性を感じました。もちろん、最後の真相も良く出来ていて不満はありません。

しかし、エピソードが多い上に様々な可能性が提示されるため、あのエピソードの真相は結局なんだったっけ? と忘れていたりもします。

民族学ミステリの始まり

戦後が舞台のホラーテイストのミステリーといえば、横溝正史はもちろんのこと、京極堂シリーズも有名。妖怪と絡めている京極堂シリーズに対して、刀城言耶シリーズは純粋な民俗学ですね。

僕の印象では、京極堂シリーズはキャラクター小説的な面白さもある広義のミステリ。刀城言耶シリーズは民俗学や怪異を用いても、あくまで本格ミステリという感じ。

記念すべきシリーズの始まりである本作は、面白く読むことができました。ただ、やはり長さは感じましたね。

特殊な世界観に説得力を持たせるために、ある程度ページ数は必要だろうし、いろんなエピソードがあるため、長くなるのは仕方ないのかもしれない。

でも、もう少し短くできたんじゃないかという気もします。

あとがき

本格ミステリや民俗学が好きな人は、読んで損はないです。でも、覚えることが多くて、事件がなかなか起きないので、最初のうちは我慢が必要かもしれませんね。

 

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