感想 ★★☆☆☆
著者の岡嶋二人はかつてコンビで活動していたミステリ作家。その中の一人、井上夢人は現在も執筆活動を続けています。
岡嶋二人は乱歩賞でデビューして多くのミステリ小説を残していますが、一人になってからは、ミステリよりもホラーを書いている印象が強いです。
本作『クリスマス・イヴ』も彼が一人で書いたようなものらしく、王道のスリラーという感じ。
あらすじ
とても楽しい夜になるはずだった。ところが、到着した別荘は真っ暗で誰の気配も感じられない。不審に思いながら室内に入ると、そこには血まみれになった仲間の死体が。
訳がわからず戸惑う二人。そこへ謎の殺人鬼がやってきて、惨劇のパーティの幕が上がる。
B級ホラー映画のような作品
スピード感があって普通に楽しめるんですが、それ以上の感想が出てこない。ミステリのように捻りが効いた意外性はなく、殺人鬼を倒す方法も普通です。
特に悪いところはないけど、平凡としか言いようがない作品。
解説によると著者は、「ただ追い回され」「脅かしの連続」に終始するノンストップ・サスペンスを書きたかった、とのこと。
なるほど、確かにその通りの作品に仕上がっています。とはいえ、物足りなさを感じてしまうのも事実。殺人鬼はジェイソンのようなモンスターではなく、普通の人間なのだ。
恐怖は感じられない
別に人間でも構わないけれど、この殺人鬼に悪役としての魅力が欠けていました。はっきり言ってこの殺人鬼に恐怖を感じない。
その一因として、殺す場面を描写していないことがあげられる。これはあえてしていないのでしょうが、スリラーの場合、殺人描写が見せ場のはずだから、あった方が良いと思う。
陰惨な殺し方によって殺人鬼への恐怖が生まれるし、当然そういうシーンを期待して読む人もいるはず。
例えばスリラー映画を見に行って、殺しのシーンがなかったら拍子抜けしてしまうでしょう。
したがってスピード感はあっても、恐怖を感じることができない。ただし、極寒の中で取り残される辛さは、しっかり伝わってきました。
寒さ、冷たさはリアルに描写されており、今の時期に布団に潜って読むには最適かもしれませんね。
あとがき
ラストはハリウッド的なハッピーエンドで、こういうタイプの作品に相応しい終わり方でした。後味もいい。
非常に映像的な作品なので、頭の中ですんなり情景を描けます。旬の若手役者を使ってスペシャルドラマにすれば、面白いかもしれませんね。
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