感想 ★★★★☆
世界でもっとも有名な探偵シャーロック・ホームズが活躍する短編集。本書には『ボヘミアの醜聞』、『赤毛組合』、『まだらの紐』などの名作を含む12編が収録されています。その他の作品も名品ばかりなので大変お得な一冊。
内容
この連作短編は基本的に困難を抱えた依頼者が、ホームズのところへ相談に訪れるところからスタートします。それをホームズとワトソンが調査するという展開。
謎解きとしての面白さはもちろんあるけれど、現代のミステリを読み慣れた人がトリックで驚くことは、ほとんどないと思います。それでも冒険ものとしての面白さもあるので、今読んでも全然楽しめます。
本書の中で個人的に好きなのは『技師の親指』と『橅の木屋敷の怪』。両作ともホラー色の強い作品で、不気味さがありハラハラさせてくれます。
確立された探偵小説の形式
シャーロック・ホームズ作品の面白さは、何と言ってもホームズとワトソンのキャラクターにあると思う。
ホームズは頭脳明晰で変装上手で探偵としてすこぶる優秀ながら、お金に執着はなく、結婚もしていない変わり者。
対するワトソンは家庭を持つ医者でホームズの唯一の友人。二人は互いのことを分かり合っており、そんな彼らの微笑ましいやりとりはずっと見ていても飽きません。
様々な楽しみをもたらしてくれる本シリーズが、人気を獲得していったのも納得。当時、ホームズが掲載されるようになってから、雑誌の売り上げは格段に延びたらしい。
著者ドイルは本当は歴史物を書きたかったみたいで、そのためにホームズを死亡させたこともあります。ですが、ファンからの猛抗議により、何年か後に再び再開する運びとなりました。
名探偵と言われるキャラクターは数あれど、これほど知名度があり、ファンから愛された探偵はシャーロック・ホームズくらいではないでしょうか。
頭脳明晰で変わり者の探偵と、平凡で常識的な語り手というスタイルは、後世に多大な影響を与えました。現代になっても、そのスタイルはミステリの定番として受け継がれています。
ミステリ史に燦然と輝くシリーズなので、是非とも読んでおきたい作品ですね。
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