感想 ★★★★☆
ダシール・ハメットはハードボイルド小説の基礎を作ったと言われるアメリカの作家。
本作は探偵社に勤める『私』が、ある呪われた一族の事件に巻き込まれていきます。
ハメットは実際に探偵社に勤めていたことがあり、その時の経験がいかされているようです。
あらすじ
探偵社調査員の『私』は、科学者のエドガー・レゲット家で起きたダイアモンド盗難事件を調査することになった。
その科学者の家族には複雑な事情があって、調べていく内に様々なことが明らかになる。その結果、事件は最悪の方向へ向かう。
科学者の娘ゲイブリエルは心身が不安定な状態に陥り、麻薬に溺れたあげく、怪しげな新興宗教にのめり込んで行く。
私はレゲット家の顧問弁士から依頼され、ゲイブリエルのいる宗教団体の施設に乗り込む。その施設でまたもや悲劇が起きてしまう。
その事件の後、ゲイブリエルの婚約者は彼女を静養させるために海辺の町へ行く。
そして、ここでも事件が起きてしまう。なんと彼女の婚約者が崖から転落死してしまうのである。
私はその事件の調査に乗り出す。なぜ彼女の周りでこれほど人が亡くなるのか。デイン家の呪いによるものなのか。
調査を続ける私は、やがて一連の事件の裏に潜む驚愕の真実を知ることになる。
感想
いやはや凄い展開ですね。これでもかというくらい様々な事件が起きます。
著者のハメット自身が本作のことを、〝バカげた物語〟とけなしたことがあるようです。
確かに突拍子もないことが起き過ぎて現実感はないのですが、普通に面白い作品でした。
黒幕の正体やその他の点にも様々な仕掛けが施されていますし、登場人物にも魅力があります。
ハードボイルドの主人公だけあって、性格は淡々としていて情に流されたりすることはありません。
一人称でありながらそういった心理描写はなく、知り合いが死んでも悲しんでいる様子などまったくありません。
一人称なのに、何を考えているかわからないところがあります。
本作は1929年の作品なんですけど、古臭さは感じなかったです。
僕が読んだのは新訳版で、翻訳者の小鷹信光氏が、ハメット研究の第一人者ということもあってか、非常に読みやすかったです。
あとがきでハメットについて知ることができたのも嬉しい。満足度の高い一冊でした。
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